本サイトは,初等中等教育現場における土壌の理解と知恵を育てる教育のあり方について検討し,土壌教育活動を実施することを目的に日本土壌肥料学会に設置された委員会の情報を掲載しております

ようこそ土壌教育委員会のサイトへ!

 土壌は生命と環境を育み,自然や社会環境の中で多面的な役割と機能を果たしています。土壌教育委員会は1982年以来初等中等教育現場における土壌の理解と知恵を育てる教育のあり方について検討してきました。
 本サイトでは土壌教育委員会のこれまでの活動および今後の予定などを紹介します。このページを読んでいただいた皆さんは勿論のこと,もっともっと沢山の子供たちや人々が土壌に興味を持つようになることが,私たちの切なる願いです。

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土壌教育活動だより 95-1

2024年2月 5日 Posted in 土壌教育活動だより Posted in お知らせ

 委員および会員による土壌教育活動を報告します.森圭子委員(埼玉県立川の博物館)は,同博物館において,7月16日に「土の特徴を調べよう」を開催しました.沖積土と黒ボク土の畑の土を用い,主に粒の大きさの調べ方について,簡単なものや時間をかけて行う方法を解説しました.参加者は55名でした.7月23日には,特別展関連イベントとして「みみずのうんちストラップづくり」を開催しました.屋外でミミズの糞を観察・採取し,屋内でレジンを用いて固めてストラップにしました.午前・午後の2回の開催で参加者の合計は35名でした.9月23日には,「土の中の生きものを観察しよう」を開催しました.屋外で土や落ち葉を採取し,ハンドソーティング法で生きものを探し,観察しました.ツルグレン法も紹介し,必要に応じて実体顕微鏡で観察しました.参加者は17名でした.10月15日には,「土の断面に洪水の痕跡を見る」を開催しました.現場観察を予定していたものの雨天のため,同博物館敷地内で令和元年東日本台風の際の堆積物が見られる断面のモノリスおよび博物館周辺の他の場所のモノリスを用いて,"水によって運ばれた土砂からできる土"について解説しました.参加者は33名でした.11月18日には,体験教室「クマムシを探して観察しよう」を開催しました.屋外で土,落ち葉,コケなどを採取し,屋内でクマムシについて簡単なお話をしてから実体顕微鏡を用いて観察しました.参加者全員がクマムシを観察することができました.参加者は15名でした.12月2日には,世界土壌デー記念として「土でアート作品づくり」を開催しました.異なる4色の土を使って和紙に絵を描き,パネルに貼って作品として仕上げました.参加者は26名でした.また同委員は同博物館において,11月14日から12月28日まで,秋のモノリス展示および世界土壌デー企画として,赤い色のものを中心にモノリスの展示を行いました.丹羽委員((株)ズコーシャ)と石倉会員(道総研十勝農業試験場)は,11月7日に北海道士幌高等学校アグリビジネス科の2年生18名を対象に出前授業を行いました.当初は一筆圃場内の地形の高低に伴う土壌断面形態の変化を見ることにしていましたが,あいにくの雨模様だったので座学を行いました.途中,天候が回復してきたので,座学終了後近隣の農家圃場に赴き,検土杖を用いて簡易に土層構成を把握すると共に,活性アルミニウムテストにより母材の確認を行いました.座学では丹羽委員が北海道を中心とした土壌分布の話をしました.特に士幌高校周辺の農地では,下層に然別降下軽石堆積物が堆積している黒ボク土であることを説明しました.次に石倉氏より,コムギの一生と適正収量を得るための穂数管理,追肥時期,土層改良技術について説明がありました.その後,圃場の4箇所(相対的な高部1箇所、底部2箇所、最底部1箇所)で検土杖による土層確認を行いました.高部では厚さ25cmの有機物層の下に褐色の火山砂が見られ,深さ30cm以深は人力で検土杖調査を行うことが困難になりました.恐らく軽石層が出現したと考えられます.それに対して,底部では2箇所とも,厚さ25cmの有機物層の下に壌質の褐色土層が25cmほど見られ,その下は10cm程度の火山砂で,深さ60cm以上は人力で検土杖調査を行うことが困難になりました.このように調査圃場では地形の高低により,有効土層の厚さが異なることが明らかになりました.さらに、底部の各土層で活性アルミニウムテストを実施しましたが,いずれの土層も即時鮮明に赤変することが分かり,改めて調査圃場が黒ボク土であることを確認しました.最底部においては、それまでの降雨の影響もあり,深さ60cmまで水分で飽和した土層が確認され,排水の重要性を確認しました.今回は残念ながら断面調査まで出来ませんでしたが,次年度,作付前の時期にリベンジを予定しています.

 本欄では会員の皆様の土壌教育活動も紹介します.情報をお持ちの方は支部選出の土壌教育委員までお知らせください.なお,土壌教育委員会の現在の構成は公式ウェブサイト http://jssspn.jp/edu/ の「委員」をご確認ください.

(日本土壌肥料学雑誌 第95巻第1号 掲載)

土壌教育活動だより 94-6

2023年12月 5日 Posted in お知らせ Posted in 土壌教育活動だより

 日本土壌肥料学会2023年度愛媛大会では1日目の2023年9月12日(火)に,恒例の「高校生による研究発表会」を愛媛大学城北キャンパス共通講義棟A 4階のポスター発表会場にて開催しました.当日は全国から9校12課題の発表がありました.約20名の高校生はポスターの前で研究内容を説明し,大会参加者からの専門的な質問やコメントを受けて,熱心な議論を行いました.90分のコアタイムを越えても活発な質疑応答が続いていました.藤原土壌肥料学会長(東京大学),上野大会運営委員長(愛媛大学),および土壌教育委員による審査の結果,最優秀ポスター賞1課題(発表番号H-S02 広島県立西条農業高等学校),および優秀ポスター賞2課題(発表番号H-S05 愛媛県立伊予農業高等学校,発表番号H-S08 山形県立村山産業高等学校)が選ばれました.当日午後に行われた表彰式では,土壌肥料学会長と大会運営委員長,森土壌教育委員長(埼玉県立川の博物館)より講評があり,森土壌教育委員長より全発表課題に対して発表証明書と参加賞が手渡されました.次いで,藤原会長より最優秀ポスター賞および優秀ポスター賞の表彰状,副賞が授与されました.発表会・表彰式などの写真は後日掲載いたします.一方,オンライン発表は,やはり全国から10校18課題が参加し,9月7日から9月18日までLINC Biz内で発表が行われ,期間中にチャット形式で質疑応答が行われました.オンライン発表に対しても審査を行い,最優秀オンラインポスター賞1課題(発表番号H-L17長野県松本深志高等学校),および優秀オンラインポスター賞2課題(発表番号H-L04青森県立名久井農業高等学校,H-L12愛知県立佐屋高等学校)が選ばれました.

 委員による活動を報告します.福田顧問(武蔵野学院大学)は,7月25日~27日に開催された「子どもゆめ基金助成活動―人々の生活と川の環境との関係を調べよう」(狭山市教育委員会後援)において,7月27日(木)の「河川植物と土壌」(狭山市立水富公民館)の講師を務めました.出席者は小学校4年生~6年生19名で,河川敷植物の在来種・外来種の種別及び被度調査と人為攪乱との関わりを調べ、土壌攪乱と植生を取り上げました.なお,「子どもゆめ基金ガイド2023」(国立行政法人国立青少年教育振興機構)に令和4年度助成活動事例「科学体験」として,「土の教室」が掲載されました.平井顧問(宇都宮大学)は9月27日(水)に行われた宇都宮市立石井小学校における総合的な学習「米作り体験」のゲストティーチャーを務めました.出席者は,5年生115名でした.この体験学習の目的は、(1)日本人の主食である米の生産を直接体験することによって,日本における米作りの歴史や文化についての関心や理解を深める,(2)日本の米作りの現状やそれに携わる人々の苦労や工夫について理解を深める,でした.5月の「田植え体験」で手植えしたイネ株の周囲をスコップで掘る体験を児童が行い,その作土付きのイネ株をポリ製のバケツに移して教室に持ち帰り,次の実験を行いました.(1)土のついたイネ株の重さの測定,(2)イネ一株の籾数の計測,(3)お茶碗一杯のご飯150グラム(約3750粒)を食べるためのイネの株数の計算,(4)春に田植えした3粒の籾が収穫時に何倍になったのかを計算しました.

 本欄では会員の皆様の土壌教育活動も紹介します.情報をお持ちの方は支部選出の土壌教育委員までお知らせください.なお,土壌教育委員会の現在の構成は公式ウェブサイト http://jssspn.jp/edu/ の「委員」をご確認ください.

(日本土壌肥料学雑誌 第94巻第6号 掲載)

土壌教育活動だより 94-5

2023年10月 5日 Posted in お知らせ Posted in 土壌教育活動だより

 委員および会員による土壌教育活動を報告します.谷昌幸氏(帯広畜産大学)が,JICA「持続的農業生産のための土壌診断と土壌改良技術(5月18日〜7月24日)」において,コースリーダーを務めエチオピア、ジョージア、パフアニューギニア、フィリピン、スリランカ、タンザニア、ザンビアからの8名の研修生を対象に研修を実施しています.土壌肥料学会会員関連分の内容(7月分)は以下の通りです(5〜6月分は前号に掲載). 7月6日〜7日:横井義雄氏(元道総研),島田紘明氏(帯広畜産大学),丹羽勝久委員((株)ズコーシャ)「美瑛町における灰色台地土,褐色森林土の土壌断面調査」.平井顧問は,8月26日(土)10時~12時に宇都宮大学農学部附属農場において開催された,栃木県立博物館主催の観察会「土ってすごイネ」に講師として参加しました.参加者は大人4名,子供3名でした.森林土壌と水田土壌の観察のポイントやその方法に関して,事前に平井顧問が説明を行いました.実施の担当者は博物館の職員で,森林下の土壌の説明は土壌動物の研究者が担当しました.参加者は森林土壌を観察し,その手触りを体感しました.その後,水田の土壌に素足で入って,水稲株を抜き取ることで体験的に土壌の形態と機能を学びました.堆肥連用水田,無肥料水田,化学肥料連用水田の土壌の形態を,参加者の素足で感じる方法をとりましたが,感触の違いを大人も子供も感じていたようでした.イネ株を土とともに抜き取る活動を行うことで参加者の表情がとても明るくなったと,博物館職員の方は感銘を受けられていました.

 支部における土壌教育活動を報告します.中部支部では,7月23(日)に豊田市自然観察の森において「土壌観察会-土の不思議にせまる!-」を開催しました(参加者は親子を中心に12名).講師は,礒井俊行氏・村野宏達氏(名城大学),岡村穣氏(元名古屋市立大学),瀧勝俊氏(JAあいち経済連),堂本晶子氏(三重県農業研究所)の5名でした.内容は、森の中での植物と土の観察,室内実験(吸着・土壌動物),ミニモノリス作りでした.この事業は今回が17回目です.

 また,同場所において,8月25日(金)に岡崎北高等学校コスモサイエンスコース1年生(36名)を対象とした「理数探究基礎」を岡崎北高校と共催、名古屋大学大学院生命農学研究科協賛で開催しました.内容は,フィールドでの植生・土壌断面観察と室内実験(緩衝能・呼吸・土壌動物)でした.講師は,浅川晋氏,渡邉彰氏,村瀬潤氏,渡邉健史氏,沢田こずえ氏,柴原藤善氏(名古屋大学),岡村穣氏(元名古屋市立大学),瀧勝俊氏(JAあいち経済連)の計7名でした.この事業は今回が15回目です.

 本欄では会員の皆様の土壌教育活動も紹介します.情報をお持ちの方は支部選出の土壌教育委員までお知らせください.なお,土壌教育委員会の現在の構成は公式ウェブサイト http://jssspn.jp/edu/ の「委員」をご確認ください.

(日本土壌肥料学雑誌 第94巻第5号 掲載)