本サイトは,初等中等教育現場における土壌の理解と知恵を育てる教育のあり方について検討し,土壌教育活動を実施することを目的に日本土壌肥料学会に設置された委員会の情報を掲載しております

ようこそ土壌教育委員会のサイトへ!

 土壌は生命と環境を育み,自然や社会環境の中で多面的な役割と機能を果たしています。土壌教育委員会は1982年以来初等中等教育現場における土壌の理解と知恵を育てる教育のあり方について検討してきました。
 本サイトでは土壌教育委員会のこれまでの活動および今後の予定などを紹介します。このページを読んでいただいた皆さんは勿論のこと,もっともっと沢山の子供たちや人々が土壌に興味を持つようになることが,私たちの切なる願いです。

Straggled Photos

高校生による研究発表会(福岡)受賞ポスター

2025年3月11日 Posted in 主催行事 Posted in 高校生による研究発表会

 日本土壌肥料学会2024年度福岡大会では,「高校生による研究発表会」を開催し,対面発表12校13課題,ならびにオンライン発表3校4課題の発表がありました.いずれも素晴らしい発表ではありましたが,特に優秀な発表について,藤原学会長と土壌教育委員による選考が行われ,以下の4課題が表彰されました.

 このうち発表者による同意の得られたものについて,受賞ポスターを公開します.リンクの付いている発表タイトルを選択してください.

【対面発表】
★最優秀ポスター賞
発表番号H-S09 広島県立西条農業高等学校 自然科学部
羽毛や髪を原料として作成した肥料の実証実験 ~硬質ケラチンを細菌の力で窒素化合物に分解~

★優秀ポスター賞
発表番号H-S02 浅野中学・高等学校 浅野学園生物部
バイオチャー散布が森林の炭素収支に与える影響と効果の持続期間の検証

発表番号H-S08 福岡県立糸島農業高等学校 地域イノベーション同好会
「コウジカビとカキガラ石灰で根こぶ病を抑える研究」

【オンライン発表】
★優秀ポスター賞
発表番号H-L03 山形県立村山産業高等学校 サトイモ・芋煮研究班
山形県におけるサトイモ生産の課題解決に関する取り組み -種芋の保存条件や収益性向上に関する検討-

土壌教育活動だより 96-1

2025年2月17日 Posted in お知らせ Posted in 土壌教育活動だより

 委員による土壌教育活動を報告します.福田顧問(武蔵野学院大学)は,サイサン環境保全基金に基づく助成活動「学校教育及び社会教育における土壌教材の開発・活用を探る」において講師を務めました.第一回は11月2日(土)午前9時~12時,第二回は11月10日(日)午前9時~午後3時に,川越キムラヤ文具店貸し教室において,筆跡研究所の主催で行われました.概要は,第一回は土壌講義,観察実験〔砂と土壌の相違,土壌粒子,土壌浄化能〕,指導案質疑・作成,第二回は土壌講義,観察実験〔土壌吸着能,土壌緩衝能,土壌モノリス,土壌呼吸〕,指導案作成・発表,模擬授業などを行いました.参加者数は高等学校教員,実習助手が第一回11名,第二回9名でした.各校での土壌に関わる授業実践報告があり,土壌講義,観察実験,討議等を踏まえて,指導案作成を試みました.様々な教科科目を担当する教員等の参加により,教科横断した貴重な土壌指導の視点を見出す,などの話し合いが行われ,充実した指導案が作成できたと考えます.今後,それぞれの学校で作成した指導案による授業実践を行い,その結果を報告する予定です.

 会員による土壌教育活動を報告します.石倉究氏(道総研十勝農業試験場)が10月10日,15日に北海道帯広農業高等学校 農業科学科第2学年8名を対象に出前授業を行いました.具体的には高校所有の圃場内で反転耕耘を省略した省耕起区と慣行区が15年間継続されており,省耕起が土壌の物理性に及ぼす影響を比較するために土壌断面調査を行いました.山中式硬度計の使い方を説明し,土層ごとのち密度を生徒たちに測定してもらった結果,慣行区と比較して省耕起区では作土および心土のち密度がやや高くなっていました.一方,10月15日には両区でテンサイの収量調査を行いましたが,収量は両区で差は認められませんでした.省耕起によって土壌物理性はやや堅密になるものの,15年の継続では収量の悪化を招くほどではなかったことを生徒たちに理解してもらい,反転耕耘の省略は農作業の省力化に有効であること,一方,定期的に土壌のち密度を確認し,収量の悪化が懸念される場合には反転耕耘が必要であることを説明しました.谷昌幸氏(帯広畜産大学)は10月23日に十勝農業機械協議会主催の講演会で,とかちプラザにおいて農業機械メーカー約40名を対象に講演を行った.タイトルは「土の力を引き出す-土の成り立ちと素性を理解する」であり,北海道と十勝地域の農耕地に分布する土壌の成り立ちや特徴について説明するとともに,とくに黒ボク土におけるリン固定と施肥の実態,排水不良土壌における心土破砕の効果などについて解説しました.10月31日には環境リサイクル肉牛協議会主催のシンポジウムで,帯広畜産大学において協議会会員約80名および北海道帯広農業高等学校生徒80名を対象に講演を行いました.タイトルは「堆肥の機能性成分と作物生産への活用」であり,十勝地域の土壌の特性や土壌有機物の重要性について説明するとともに,肉牛糞尿の堆肥化に伴う腐植化と堆肥に含まれる腐植物質の機能や役割について解説しました.12月11日には北根室地区農業改良協議会主催のセミナーで,道総研酪農試験場において酪農家,関係機関・団体職員,獣医師など約50名を対象に講演を行いました.タイトルは「土壌診断に基づく土壌改良や適正施肥による粗飼料生産」であり,根釧地域の草地に分布する土壌の成り立ちや特徴について説明するとともに,粗飼料生産における土壌の塩基飽和度や有効態リン酸の適正化などの重要性について解説しました.

 支部における土壌教育活動を報告します.北海道支部では,2024年度秋季支部大会(12/5)において,道内の高校生による研究発表会(ポスター発表)を,北海道教育委員会の後援を受け,実施しました.申し込みは3校,5課題でした.タイトルについて前報より若干の変更がありましたので,改めて報告します.「馬鈴薯におけるいも肥大効果を求めたバイオスティミラント(クエン酸)資材の実験」(北海道真狩高等学校),「地域未利用資源を活用した炭素循環農法の課題解決学習について」(北海道真狩高等学校),「北海道版リジェネラティブ農業実証試験〜マメ科緑肥作物を用いた不耕起栽培〜」(北海道真狩高等学校),「生ゴミの堆肥化を応用した土壌の生産~家庭内でのコンポストの活用」(札幌市立開成中等教育学校),「省耕起が畑地の土壌物理性に及ぼす長期的影響」(北海道帯広農業高等学校).当日は支部会員と活発な議論が見られました.優秀ポスター発表賞には北海道帯広農業高校が選ばれました.おめでとうございます.

 本欄では会員の皆様の土壌教育活動も紹介します.情報をお持ちの方は支部選出の土壌教育委員までお知らせください.なお,土壌教育委員会の現在の構成は公式ウェブサイト https://jssspn.jp/edu/ の「委員」をご確認ください.

(日本土壌肥料学雑誌 第96巻第1号 掲載)

土壌教育活動だより 95-6

2024年12月16日 Posted in お知らせ Posted in 土壌教育活動だより

 委員による土壌教育活動を報告します.平井顧問と会員の早川智恵氏(宇都宮大学)は,8月24日に,宇都宮大学農学部附属農場において,栃木県立博物館の観察会「田んぼ物語②~土の観察と稲の観察」(http://www.muse.pref.tochigi.lg.jp/event/watch.html)において講師を務めました.当学会は2024年度に初めてこの観察会を後援し,土壌教育委員会では「教員研修およびその他の普及事業」における「土壌教育に関わる体験学習・観察会の開催および講師参画」の枠組みとして位置づけました.土壌教育の国際ガイドライン(https://doi.org/10.20710/dojo.93.5_321)に則ると,地域固有の文化環境に身を置いて土壌に触れ感受することが,土壌の深い理解の第一歩であるとされましたので,地域固有の文化環境の中に身を置き,土壌に触れ感受するという観点から本観察会が企画されました.その概要は,①附属農場内の落葉広葉樹林下の落葉をめくって表土に生息するミミズ等の小動物を探索する,②分解途中の落葉を篩い目の大きさの異なる篩でふるい分け,古いから落ちてきたものを観察して,より小さな動物を探索するとともに,小動物が排せつした粒状の土を観察する.この過程を経ることで,栄養が豊かになった土の性質を,その手触りを感受し学習する,③6月1日に水田に植えた苗が栄養豊かな表土から養分を吸収するとどの程度大きくなるのかを,田植えした水田でイネ株を素手で掘り取り観察する,④堆肥で育てたイネ株,化学肥料で育てたイネ株,肥料を加えないで育てたイネ株,それぞれを表土とともに掘り取り,その表土に素手で触れてもらい,その手触りを体感する,というものでした.これまで実施してきた博物館主催の観察会の内容を,素手や素足で土壌を感受するという観点を新たに組み込み,より充実させた内容となっています.参加者は,大人21名,小学生14名,幼児5名,博物館スタッフ4名,大学教員2名,学生アルバイト4名で,合計50名でした.

 会員による土壌教育活動を報告します.石倉究氏(道総研十勝農業試験場)が9月18日に北海道帯広農業高等学校 農業科学科第2学年38名を対象に出前授業を行いました.はじめに,秋まき小麦の一生と肥培管理法について講義を行い,播種適期,播種床造成,播種深度の重要性を解説しました.次に,播種機を前にして播種深度を一定に保つための播種機の設定や,土壌の種類に合わせた播種床造成を解説し,実際に小麦を播種した上で,播種深度を確認しました.最後に,近年のトラクタに標準的に搭載されている自動操舵機能の利点を解説し,土壌に合わせたスマート農業の有効性について考察してもらいました.次回は小麦の越冬前調査を予定しています.谷昌幸氏(帯広畜産大学)が,9月18日に,大分県豊後高田市で開催された「九州沖縄土を考える会」で土壌断面観察会と講演を行いました.まず、豊後高田市呉埼の干拓地において土壌断面調査を行い,前島勇治氏と森下瑞貴氏(農研機構農業環境研究部門),島田紘明(帯広畜産大学)と一緒に,砂質な未熟低地土の特徴を説明するとともに,白ネギ栽培における土壌の管理や改良などについて生産者の方々と意見交換を行いました.次に,豊後高田市役所の会議室において,「土壌の力を引き出すために-土壌診断から養分バランスを見極める」と題した講演を行い,土壌診断値からどのようにして積極的な減肥につなげるについて説明するとともに,とくにリン酸施肥の見直しについて生産者の方々と論議しました.

 支部における土壌教育活動を報告します.北海道支部では,2024年度秋季支部大会(12月5日)において,道内の高校生による研究発表会(ポスター発表)を,北海道教育委員会の後援を受け,実施する予定です.申し込みは3校,5課題です.タイトル,高校は次の通りです.「馬鈴薯におけるいも肥大効果を求めたバイオスティミラント(クエン酸)資材の実験」(北海道真狩高等学校),「地域未利用資源を活用した炭素循環農法の課題解決学習について」(北海道真狩高等学校),「北海道版リジェネラティブ農業実証試験 〜マメ科緑肥作物を用いた不耕起栽培〜」(北海道真狩高等学校),「生ゴミの堆肥化を応用し植物に良い土を作る」(札幌市立開成中等教育学校),「省耕起が畑地の土壌物理性に及ぼす長期的影響」(北海道帯広農業高等学校).なお,詳細は次の土壌教育活動便りにてお伝えします.

 本欄では会員の皆様の土壌教育活動も紹介します.情報をお持ちの方は支部選出の土壌教育委員までお知らせください.なお,土壌教育委員会の現在の構成は公式ウェブサイト http://jssspn.jp/edu/ の「委員」をご確認ください.

(日本土壌肥料学雑誌 第95巻第6号 掲載)