土壌教育委員会がかかわる活動を紹介

委員会のあゆみ:1982〜1995年度

2004年8月 1日 Posted in 委員会のあゆみ
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 わが国の初等中等教育における土壌教育の強化を図るために、(社)日本土壌肥料学会に非公式に土壌教育検討会が1982年度に設けられ、さらに1983年度から土壌教育強化委員会として改組され公式に設置されたのが、現在の土壌教育委員会の始まりです。その主な活動として、1)初等中等教育の現場での土壌教育の実態調査、2)教育現場で使用効果がある教育手引書の作成、3)土壌教育強化のための具体的方策の検討などが計画されました。この最初の委員会は、1985年度まで同じメンバーで活動しましたが(木内知美委員長、大羽裕・島根茂雄・都留信也・永塚鎮男・浜田竜之介・松井健・和田秀徳の7名の委員)、この期間の最大の活動成果は、初等中等教育における土壌教育についての現場小・中学校教師の考え方と実態についての全国アンケート(小学校271校、中学校170校)を実施して、土壌教育の現状・実態把握と、それに基づいた基本的な活動指針を策定した点です。つまり、1)小・中学校教員の土壌に関する知識向上、2)自然科学系博物館等における土壌標品(モノリス)の展示促進、3)自然観察会などにおける土壌解説の導入、4)小・中学校における土壌関連の教科(理科・社会科・技術家庭科)の教科書記載内容の検討、5)文部省・教科書出版社などへの土壌教育教科についての意見申し入れなど具体的活動指針が策定されました。委員会の名称が1984年に土壌教育委員会と改められ今日に至っていますが、その具体的な活動内容は、初代木内委員長がまとめた基本計画にほぼ沿ったもので、現在まで時間はかかったものの着実に歩んで来ました。

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 1986年度から1989年度にかけては、永塚鎮男委員長のもとで、主に諸外国の教科書とわが国のそれとの比較、土壌を使った実験の教材化とその改正点などについての検討が行われました。また、永塚委員長の執筆による「教師のためのやさしい土壌学」が雑誌「理科の教育」に5回にわたり掲載され、現場の教師に土壌に関する知識向上に一定の効果をもたらしました。1990年度および1991年度には、わが国で初めて国際土壌科学会議が京都で開催され、主催した日本土壌肥料学会がその運営に集中していたため、特筆すべき土壌教育委員会の活動はできませんでしたが、1992年度に入り、坂上寛一委員長のもとで、土壌に関する教師向けの副読本の作成、学校教育関係諸団体への働きかけ、社会教育関係機関への実態調査などについて検討・計画され、新たな展望を掲げて、1995年度まで活発に活動が行われました。特筆すべきことは、土壌教育委員会活動の新しい試みとして、平成7年度(1995年度)科学研究費補助金研究成果公開促進費(B)の交付を受け、小学校5・6年生を対象とした"土の話と観察会"を開催したことです(於東京農工大学)。この申請は、続く1996・1997年度にも申請しましたが、残念ながら採択とはなりませんでした。しかし、この最初の土壌観察会は、実際に学会員が自ら学校教育現場や社会教育施設に赴いて、土壌教育活動を行うというその後に繋がる足固めができた最初の1歩とも言えます。

東 照雄(2004年8月)