土壌教育活動だより 96-1
委員による土壌教育活動を報告します.福田顧問(武蔵野学院大学)は,サイサン環境保全基金に基づく助成活動「学校教育及び社会教育における土壌教材の開発・活用を探る」において講師を務めました.第一回は11月2日(土)午前9時~12時,第二回は11月10日(日)午前9時~午後3時に,川越キムラヤ文具店貸し教室において,筆跡研究所の主催で行われました.概要は,第一回は土壌講義,観察実験〔砂と土壌の相違,土壌粒子,土壌浄化能〕,指導案質疑・作成,第二回は土壌講義,観察実験〔土壌吸着能,土壌緩衝能,土壌モノリス,土壌呼吸〕,指導案作成・発表,模擬授業などを行いました.参加者数は高等学校教員,実習助手が第一回11名,第二回9名でした.各校での土壌に関わる授業実践報告があり,土壌講義,観察実験,討議等を踏まえて,指導案作成を試みました.様々な教科科目を担当する教員等の参加により,教科横断した貴重な土壌指導の視点を見出す,などの話し合いが行われ,充実した指導案が作成できたと考えます.今後,それぞれの学校で作成した指導案による授業実践を行い,その結果を報告する予定です.
会員による土壌教育活動を報告します.石倉究氏(道総研十勝農業試験場)が10月10日,15日に北海道帯広農業高等学校 農業科学科第2学年8名を対象に出前授業を行いました.具体的には高校所有の圃場内で反転耕耘を省略した省耕起区と慣行区が15年間継続されており,省耕起が土壌の物理性に及ぼす影響を比較するために土壌断面調査を行いました.山中式硬度計の使い方を説明し,土層ごとのち密度を生徒たちに測定してもらった結果,慣行区と比較して省耕起区では作土および心土のち密度がやや高くなっていました.一方,10月15日には両区でテンサイの収量調査を行いましたが,収量は両区で差は認められませんでした.省耕起によって土壌物理性はやや堅密になるものの,15年の継続では収量の悪化を招くほどではなかったことを生徒たちに理解してもらい,反転耕耘の省略は農作業の省力化に有効であること,一方,定期的に土壌のち密度を確認し,収量の悪化が懸念される場合には反転耕耘が必要であることを説明しました.谷昌幸氏(帯広畜産大学)は10月23日に十勝農業機械協議会主催の講演会で,とかちプラザにおいて農業機械メーカー約40名を対象に講演を行った.タイトルは「土の力を引き出す-土の成り立ちと素性を理解する」であり,北海道と十勝地域の農耕地に分布する土壌の成り立ちや特徴について説明するとともに,とくに黒ボク土におけるリン固定と施肥の実態,排水不良土壌における心土破砕の効果などについて解説しました.10月31日には環境リサイクル肉牛協議会主催のシンポジウムで,帯広畜産大学において協議会会員約80名および北海道帯広農業高等学校生徒80名を対象に講演を行いました.タイトルは「堆肥の機能性成分と作物生産への活用」であり,十勝地域の土壌の特性や土壌有機物の重要性について説明するとともに,肉牛糞尿の堆肥化に伴う腐植化と堆肥に含まれる腐植物質の機能や役割について解説しました.12月11日には北根室地区農業改良協議会主催のセミナーで,道総研酪農試験場において酪農家,関係機関・団体職員,獣医師など約50名を対象に講演を行いました.タイトルは「土壌診断に基づく土壌改良や適正施肥による粗飼料生産」であり,根釧地域の草地に分布する土壌の成り立ちや特徴について説明するとともに,粗飼料生産における土壌の塩基飽和度や有効態リン酸の適正化などの重要性について解説しました.
支部における土壌教育活動を報告します.北海道支部では,2024年度秋季支部大会(12/5)において,道内の高校生による研究発表会(ポスター発表)を,北海道教育委員会の後援を受け,実施しました.申し込みは3校,5課題でした.タイトルについて前報より若干の変更がありましたので,改めて報告します.「馬鈴薯におけるいも肥大効果を求めたバイオスティミラント(クエン酸)資材の実験」(北海道真狩高等学校),「地域未利用資源を活用した炭素循環農法の課題解決学習について」(北海道真狩高等学校),「北海道版リジェネラティブ農業実証試験〜マメ科緑肥作物を用いた不耕起栽培〜」(北海道真狩高等学校),「生ゴミの堆肥化を応用した土壌の生産~家庭内でのコンポストの活用」(札幌市立開成中等教育学校),「省耕起が畑地の土壌物理性に及ぼす長期的影響」(北海道帯広農業高等学校).当日は支部会員と活発な議論が見られました.優秀ポスター発表賞には北海道帯広農業高校が選ばれました.おめでとうございます.
本欄では会員の皆様の土壌教育活動も紹介します.情報をお持ちの方は支部選出の土壌教育委員までお知らせください.なお,土壌教育委員会の現在の構成は公式ウェブサイト https://jssspn.jp/edu/ の「委員」をご確認ください.
(日本土壌肥料学雑誌 第96巻第1号 掲載)