土壌教育委員会がかかわる活動を紹介

委員会のあゆみ:1996〜2001年度

2004年8月 1日 Posted in 委員会のあゆみ
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 1996年度から1999年度の4年間では、東照雄委員長のもと、以下に述べるいくつかの重要な活動が展開されました。1)1997年度には、文部省の学習指導要領の1998年度改訂に際し、関連各教科の土壌に関する記載内容の改善を具体的な形で提案・要望を行いました。このような活動は、既に、1985年度に、土壌教育に関する要望書を、都道府県・大学などの教育関係者、国会議員、博物館などおよそ土壌教育に関係した機関・人々に送付して、土壌教育強化への理解を社会に求めたことがあり、その経験も活かして、土壌教育に関わる社会状況の変化を考えて改めて行ったものでした。しかし、文部省からは要望書に一定の理解を示して頂いたものの、残念ながら具体的な成果はなく、この種の活動の限界性も認識せざるを得なかったのも事実です。2)1992年度から計画されていた初等中等教育の現場の教師を対象にした「土をどう教えるかー新たな環境教育教材-」(118ページ、古今書院、東京)が刊行されました(1998年度)。この本は、現場の先生への教材の提供に重点がおかれ、総合学習の時間にも活用できるような環境教育を意識したものですが、広く現場の先生方に活用されています。今後とも、時代に即したこのような教材本は、継続的に改訂・改善を行いながら、刊行する必要があると考えています。3)全国に10ヶ所ある自然観察の森施設を活用して、まず、茨城県牛久市の牛久自然観察の森で、土壌観察会「土となかよくなろう」を開催しました(1999年度)。土壌教育委員会として初めての試みであり、参加者の年齢層も幼稚園生から70台の方々まで幅広く、土の観察会のやり方について改めて検討する良い機会となりましたが、これを契機に、後で述べるように、毎年1回ですが全国の自然観察の森で現在まで継続的に開催して来ています。

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 2000年度から2001年度には、田村憲司委員長のもと、さらに土壌教育委員会活動が活発になりました。自然観察の森での土壌観察会は、横浜自然観察の森(2000年度)、桐生自然観察の森(2001年度)と続き、観察会の充実のために、平易に書かれた小冊子を用意したり、自然観察の森には来訪者が手に取り学習できる約2000部のリーフレットを寄贈したりし、土壌モノリスを現場で作成しながら、土壌ウォッチングの楽しさが参加者により伝わりやすいように工夫しました。観察会の内容も、午前中に実際の土壌断面の観察をして、午後からその土を使って実験をするというスタイルが定着しました。実験の内容は、できるだけ視覚的にも分かりやすい実験として、色水を土壌に通す実験や土壌に住んでいる微生物や植物根からの二酸化炭素の放出実験などを行ってきました。また、2000年度8月に開催された国立科学博物館の企画展「土壌の世界」には、展示・講演会・体験コーナーで土壌教育委員会のメンバーを中心に積極的に貢献しました。この企画展は、わが国で初めての内容のもので、夏休み期間中多くの子供たちに土壌の秘密知ってもらい、身近な存在として実感してもらう又とない機会になりました。さらに、この活動期間の注目すべき大きな活動として、教師のための教材本(1998年度刊行)の成果に基づいて、もっと初等中等教育の現場で土壌教育を普及し促進するために、小中高校の生徒たちが理解しやすく、実際にすぐに役に立ち、親しみの湧く「土の絵本」(一冊35ページの5冊本で、土とあそぼう、土の中の生き物、土と作物、土と風景、環境を守る土のタイトルがついています。農文協、東京)を刊行したことです。内容は、このホームページにもありますから是非見て頂きたいのですが、世界で初めての絵本で、幸運にも産経児童出版文化賞も頂き、順調に版を重ね、教育現場のみならず、図書館などで広く一般の市民も含めて活用されています。サッカー少年・少女のようには裾野が広がらなくても、土壌に関心を持つ子供たちが次第にもっと多くなることを心から願っています。

東 照雄(2004年8月)