高校生による研究発表会(北海道)2021-09-14
2021年11月 1日 Posted in 高校生による研究発表会
日本土壌肥料学会2021年度北海道大会では1日目の2021年9月14日(火)に北海道教育委員会の後援を受け,恒例の「高校生による研究発表会」を開催しました.開催方法は昨年度に引き続きLINK Bizを用いたオンライン発表となりました.
コロナウイルスの影響により課外活動が制限を受ける中ですが,昨年度の12課題を上回る18課題(10校)の発表申込が全国からありました.
発表会当日のコアタイム,そしてコアタイム以外の時間にも,北海道大会一般参加者延べ99名から,各発表課題のポスターや発表動画に対してコメントが寄せられ,チャット機能を活用した熱心な質疑応答が行われました.
愛知県立安城農林高等学校のオンライン発表,質疑応答の様子
北海道士幌高等学校のオンライン発表,質疑応答の様子
会長,大会運営委員長および土壌教育委員による審査の結果,最優秀賞1課題,優秀賞3課題が選ばれました.
最優秀賞(1課題)
トマトの水耕栽培により排出される根の残渣活用に関する研究―シマミミズによるリンの循環-(愛知県立安城農林高等学校 園芸科 施設野菜研修班 )
優秀賞(3課題)
ドローンを利用した土壌の乾燥過程マップの作成(北海道士幌高等学校 アグリビジネス科)
エコロジカルサニテーショントイレによる糞便の堆肥化(宮城県仙台二華高等学校 グローバルスタディ課題研究III)
キシャヤスデの物理運動について(山梨英和高等学校 自然科学部)
最優秀賞に選ばれた愛知県立安城農林高等学校の集合写真
優秀賞に選ばれた北海道士幌高等学校の集合写真
優秀賞に選ばれた宮城県仙台二華高等学校の集合写真
参加校と題目は下記の通りです.
発表題目 | 学校名 | クラブ名等 | |
1 | 水中振動が水耕栽培野菜の機能性成分に与える影響 | 青森県立名久井農業高等学校 | Flora Hunters |
2 | 早期仕上げ摘果、灌水、ハイブリッド剪定が早生桃の肥大に及ぼす影響 | 青森県立名久井農業高等学校 | 6代目 LAST TEAM PINE |
3 | 甘利山土壌環境調査XIII-甘利山土壌における酸性ホスファターゼ(ACP)活性測定とACP産生菌の種の同定- | 山梨県立韮崎高等学校 | 環境科学部 |
4 | 岩見沢市のタマネギ連作圃場におけるリン酸減肥と腐植が収量に与える影響 | 北海道岩見沢農業高等学校 | 農業科学科 SS専攻班 |
5 | トマトの水耕栽培により排出される根の残渣活用に関する研究―シマミミズによるリンの循環- | 愛知県立安城農林高等学校 | 園芸科 施設野菜研修班 |
6 | ドローンを利用した土壌の乾燥過程マップの作成 | 北海道士幌高等学校 | アグリビジネス科 |
7 | 緑のダムの貯水能-土壌断面調査と土壌透水性― | 京都府立嵯峨野高等学校 | サイエンス部 |
8 | 自然の土への接触が認知・感情に与える影響について | 作新学院高等学校 | 宇都宮大学グローバルサイエンスキャンパス(iP-U) |
9 | 乾燥地における塩害抑制技術の開発 | 青森県立名久井農業高等学校 | Flora Hunters |
10 | エコロジカルサニテーショントイレによる糞便の堆肥化 | 宮城県仙台二華高等学校 | グローバルスタディ課題研究III |
11 | アンコールクラウ村における濾過装置の現地普及のために | 宮城県仙台二華高等学校 | グローバルスタディ課題研究III |
12 | 異なる産業廃水を嫌気性処理する微生物叢の比較 | 宮城県仙台二華高等学校 | グローバルスタディ課題研究III |
13 | バーミキュライトによる水質浄化研究 | 青森県立名久井農業高等学校 | Flora Hunters |
14 | 三和土を利用した無洗剤洗浄システムの研究 | 青森県立名久井農業高等学校 | Flora Hunters |
15 | 鶏卵の鮮度保持とサルモネラ菌対策に関する研究 | 青森県立三本木農業高等学校 | PINE LAB |
16 | 高オレイン酸ヒマワリ種子給与が黒毛和種の脂肪中オレイン酸割合に及ぼす影響 | 青森県立三本木農業高等学校 | 産業動物研究班 |
17 | キシャヤスデの物理運動について | 山梨英和高等学校 | 自然科学部 |
18 | 大気中のラドン濃度と地震の関連性-嵯峨野高校校有林でのラドン濃度測定- | 京都府立嵯峨野高等学校 | 校有林調査ラボ |
- 会長による講評:
- さまざまなテーマの研究発表を楽しく,興味深く見せていただきました.どの発表も力作で,高校生の皆さんのエネルギーが伝わって来るのを感じました.コロナ禍の中,研究活動にも大きな制限があったのではと推測します.そのような状況でも,立派な研究を成し遂げられた皆さんに心から敬意を表します.研究を進める中で,皆さんは,教室での通常の授業とは異なる活動を行い,様々な体験をし,時には大きな苦労もされ,そして大きな達成感や喜びを得たことと思います.研究を通じて皆さんは一回りも二回りも成長されたに違いありません.皆さんによって得られた様々な研究成果が今後さらに発展して,農業生産や生態系保全,環境技術,災害防止,学術,科学技術,教育などの各方面へ広がっていくことを願っています.そして,私が最も期待するのは,この研究活動で得た経験を土台として,皆さんが今後いろいろな分野でさらに学びと経験を重ね,大きく活躍されることです.皆さんの前には無限の可能性が広がっています.頑張ってください!
- (東京大学 妹尾 啓史)
- 大会運営委員長による講評:
- 18題の発表はどれも独自性があり,生理的,生物学的,物理学的なメカニズムを解明しようと取り組む内容から,農業現場での展開を意識した実学的な内容まで幅広く,大変興味深く意見交換をさせていただきました.自分たちにとってもまだまだわからないテーマもあり,高校生の皆さんというよりは学会員の皆さんにとっても色々と勉強になったと思います.今後も土壌肥料学分野の研究に興味を持ち続けてください.今回の発表を心から感謝いたします.
- (北海道大学 信濃 卓郎)
- 土壌教育委員長による講評:
- コロナ禍での土肥大会は2回目の開催となりました.LINC Bizを利用したオンライン発表による「高校生による研究発表会(北海道)」では,2019年に開催された静岡大会と同数の18課題の発表が行われました.土肥学会の支部区分による発表高校の所在地域は北海道2校,東北10校,関東3校,中部1校,関西2校であり,開催地を反映した様子が伺われ,特に地域の農業生産に関する課題を取り上げた9件の発表が農業高校より行われました.さらにオンライン発表にも工夫が凝らされ,回を重ねる毎に見易いスライドが作成されていると思います.土肥学会の区分による発表分野は環境6課題,土壌生物4課題,土壌肥沃度3課題,植物栄養2課題,肥料・土壌改良,土壌物理,社会・文化土壌学各1課題となり環境,土壌生物に関する発表が多数を占めておりました.オンライン発表は開催地会場に出向くことなく,発表全員が参加可能であると共に学会参加者はポスターのアップロードと共に内容を検討する時間が十分に確保できると共に質疑応答内容をテキスト保存できる利点があることから,今後の発表課題数の増加を期待しております.最後にコロナ渦の中で発表準備された生徒のみな様,指導にあたられた先生並びに諸氏に感謝致します.
- (日本大学 隅田 裕明)
土壌教育委員会:丹羽 勝久