土壌教育活動だより 89-1
土壌教育委員会の活動を報告する.2017年3月に公示された新しい学習指導要領第4学年理科において「(3) 雨水の行方と地面の様子」が新設され,「雨水の行方と地面の様子について,流れ方やしみ込み方に着目して,それらと地面の傾きや土の粒の大きさとを関係付けて調べる活動」が明記された.本委員会では,「土の粒」の指導内容に関する作業部会を2017年6月に設置し,ウェブサイト等を通じて寄せられたコメントも参考にしつつ検討を重ね,本年1月に指導案「地面をつくる土の粒と雨水の行方」を公表した.本指導案は,学会長名で都道府県等教育委員会,教科書出版社および関連学会宛に送付され,関連する動画およびワークシートとともにウェブサイトに掲載されている.
次に委員による土壌教育活動を紹介する.①8月1~2日,雑木林(狭山市)で「林を活用した自然活動や観察・実験を考える」をテーマとした教員研修会に講師として参加した.参加者4~5人で班をつくり,林の中で観察・実験に活用できそうな題材や教材探しを行った.土に関しては,「林と畑,田んぼ,グラウンドの土の違いを探ろう」,「土を掘って断面を見てみよう」の2つが取り上げられた.②8月3日,武州ガスの「子どもエコ教室」に講師として招かれ,飯能市の森で「森林の土」の調査及び講話を行った.参加者は小学生13名と大人3名であった.現地では,土が層に分かれている様子や土の団粒構造を観察した.その後,日本の国土と森林,森林の役割及び多面的機能,里山(人工林)の変化,輸入材の増加,熱帯林の喪失と土壌流出など,図版を使って解説し,森が土をつくり,土が森を育てることを説明した.③8月19日,大妻嵐山女子中学・高等学校で土壌講座が開催され,講師を担当した.参加者20人に対し,「土とは何か」,「土の生成」,「土の機能」,「日本の土・世界の土」などの概要を説明後,様々な土壌と砂の5感を使った観察,土壌粒子実験,土壌吸着実験を行った.①~③について,福田直顧問(武蔵野学院大学)が担当した.
最後に支部の活動を報告する.昨年11月25日に開催された2017年度日本土壌肥料学会関東支部神奈川大会(日本大学生物資源科学部)において,支部主催の高校生ポスター発表会が開催された.当日は,関東圏内より7課題(5校)の発表があった.コアタイムでは,支部会員の鋭い指摘に対し,懸命に受け答えする高校生の様子が見受けられた.関東支部幹事の審査により,最優秀賞1課題(東京都立科学技術高等学校)および優秀賞2課題(埼玉県立熊谷西高等学校,山梨県立日川高等学校)が選ばれた.
土壌教育にかかわる活動をされた会員の方は,支部選出の土壌教育委員までお知らせ下さい.委員の連絡先は,土壌教育委員会のウェブサイトhttp://jssspn.jp/edu/の「委員のページ」をご覧ください.
(日本土壌肥料学雑誌 第89巻第1号 掲載)