土壌教育活動だより 93-5
委員による活動を報告します.丹羽委員(株式会社ズコーシャ)は,7月9日に「千曲川ワインアカデミー」(主催者:日本ワイン農業研究所「アルカンヴィーニュ」)という日本で初めての民間ワインアカデミーの中で「日本の土壌とワインづくり」というタイトルで講義を実施しました.参加者は36名で、ワイン用ぶどうの栽培を検討している方やワインについて造詣を深めたい方が対象です.当日は座学で日本の土壌分布、土壌診断、有機農業等の説明を行いました.また、現地にて傾斜地の巨岩を含む土壌断面と平坦地の重粘土質の土壌断面を観察し,近接する区域でも立地条件によって土壌断面形態は大きく異なることを学習しました.森委員(埼玉県立川の博物館)は,7月17日に,同博物館において随時参加型のワークショップ「土の中の生きもの」を催しました.篩を用いた大型土壌動物を調べる方法と、ツルグレン装置を用いた中型土壌動物を調べる方法を紹介し,土壌動物を肉眼もしくは実体顕微鏡で観察してもらいました.保護者を含む参加者は193名でした.7月24日から8月30日まで、同博物館で開催の特別展「海なし雪なし火山なし-ないけどある!埼玉との深い関係」に合わせて「火山噴火でできた土と埼玉県の土」としてモノリス5本を展示しました.併せて7月24日には,随時参加型のワークショップ「火山噴火でできた土ってどんな土?」を催し,黒ボク土と沖積土の表層土について,色と手触りを感じてもらいながらモノリスと併せて火山噴火でできる土について解説しました.参加者は112名でした.福田顧問(武蔵野学院大学)は,8月26日に開催された狭山市学童保育会「富士山登山・自然観察会」において、「富士山の自然」の講師を担当し、植物、動物、地質の解説を行いました.ナラ枯れや標高と気象・土・植物分布の関係などを観察・解説しました.参加者は狭山市内小学生20名でした.土を自由研究テーマとして取り上げる児童らも見られ,森林限界と気象や土との関わり,スコリア,地衣・コケ群落の発達と土壌化などに興味・関心を持ち,解説に耳を傾けるとともに観察・記録していました.平井顧問(宇都宮大学)は,8月27日に宇都宮大学農学部附属農場で開催された栃木県立博物館の観察会「たんぼ物語~土ってすごイネ~」の講師をつとめました.参加者は17名(内訳:児童8名大人9名)でした.活動内容は、宇都宮大学農学部附属農場内の雑木林の森林土壌の断面(150cm深)を,土に触れながら観察しました.博物館の学芸員の方より,表土が植物の生育にはなくてはならない大切な層で多くの根があること,下層土には鹿沼軽石層や関東ローム層が観察できるけれども,根はあまり観察されない点などの説明があり,表土が命の源である点が参加者に紹介された点が印象的でした.次に,水田圃場において,無肥料の水田,化学肥料を連用している水田,堆肥を連用している水田の3種類の水田のイネ株を掘り取るために,子供たちに素足で水田に入り,イネの根系を手で感じながら表土と根系と共にイネ株を抜き取りました.さらにそのイネのもみ数や穂数を計測し,1株当たりのもみ数より,お茶碗一杯のご飯を食べるためには,何株のイネ株が必要かについて計算しました.最後に,一年間食べている白米の重さをイネ株とお茶碗一杯の白米の重さの関係性から,水田圃場にその面積を示すという説明が博物館の学芸員から参加者に行われました.児童は,水田で素足で入った感触が印象に残っていたようで、楽しかったとのことでした.
本欄では会員の皆様の土壌教育活動も紹介します.情報をお持ちの方は支部選出の土壌教育委員までお知らせください.なお,土壌教育委員会の現在の構成は公式ウェブサイト http://jssspn.jp/edu/ の「委員」をご確認ください.
(日本土壌肥料学雑誌 第93巻第5号 掲載)