土壌教育活動だより 93-6
日本土壌肥料学会2022年度東京大会では1日目の2022年9月13日(火)に,恒例の「高校生による研究発表会」を東京農業大学世田谷キャンパス1号館3Fのポスター発表会場にて開催しました.当日は全国から20課題(17校、ポスター掲示のみの発表6校7課題を含む)の発表がありました.約40名の高校生はポスターの前で研究内容を説明し,大会参加者からの専門的な質問やコメントを受けて,熱心な議論を行いました.90分のコアタイムを終えても活発な質疑応答が続いていました.学会会長,大会運営委員長および土壌教育委員による審査の結果、最優秀ポスター賞2課題(発表番号9 青森県立三本木農業恵拓高等学校,発表番号12 広島県立西条農業高等学校)および優秀ポスター賞3課題(発表番号3 山形県立村山産業高等学校,発表番号5 北海道岩見沢農業高等学校,発表番号6 東京農業大学第三高等学校)が選ばれました.当日夕方に行われた表彰式では、妹尾土壌肥料学会長(東京大学)と藤原大会運営委員長(東京大学)より講評があり、森土壌教育委員長(埼玉県立川の博物館)より全発表課題に対して発表証明書と参加賞が手渡されました。次いで、妹尾会長より最優秀ポスター賞および優秀ポスター賞の表彰状,副賞が授与されました.全体の発表に関する講評および一部の受賞者の写真を土壌教育委員会のHPに掲載しています.
委員による活動を報告します.福田顧問(武蔵野学院大学)は,7月25日(月)~7月29日(金)の5日間(9時30分~12時30分),国からの助成を受けて「土の教室」を狭山市立水富公民館で開催・実施しました.参加者は狭山市内の公立小学校15校(4年生~6年生対象)から募集し,申し込まれた17名でした.内容は,「地球温暖化と土の呼吸」,「土の生きものの多様性」など5つのテーマからなり,講義,観察・実験,ディスカッション,発表を行いました.連続5回の「土の教室」を通して,児童らは「温暖化の影響が土にも及んでいる」,「森林伐採が土の生きものの多様性の喪失に関係している」ことなどに関心を持ち,地球環境問題の解決に向けて何ができるかを話し合いました.27日には助成担当者2名が視察に訪れ,土の教育に強い関心を持っていただきました.森委員(埼玉県立川の博物館)は,2022年10月15日に,同博物館において体験教室「落ち葉めくり」を催しました.博物館内の林の下で落ち葉をめくりながら採取し,生き物が落ち葉を分解する様子や菌糸などを観察しました.さらに試料を室内に持ち帰り,実体顕微鏡を用いて土の中の生き物を観察しました.保護者を含む参加者は15名でした.
北海道支部委員会の活動を報告します.10月25日に北海道立士幌高等学校内において土壌断面研修を十勝農業試験場の櫻井氏,石倉氏の協力を得て実施しました.対象は2年生の生徒15名,教員2名です.具体的には高校内の未耕地と隣接耕地の土壌断面を観察しました.未耕地は傾斜を持ち,地形的上部に位置する区域の土壌断面は然別由来と考えられる軽石層が深部に出現する黒ボク土でした.それに対して隣接圃場は平坦であり,畑地化に向けて地形修正が行われたと考えられました.実際、耕地の土壌断面ではA層の腐植層が未耕地よりも淡く,軽石層が未耕地よりもかなり浅い位置に出現する等,土層が攪乱されたような痕跡が見られました.なかなか高校においても,土壌断面を見せる機会がないようです.北海道支部土壌教育委員会として今回のような活動を継続していきたいと考えています.引き続き皆さんの協力をお願いします.
写真1 士幌高校内の未耕地の土壌断面
写真2 士幌高校内の耕地の土壌断面
写真3 研修風景
写真4 研修風景
本欄では会員の皆様の土壌教育活動も紹介します.情報をお持ちの方は支部選出の土壌教育委員までお知らせください.なお,土壌教育委員会の現在の構成は公式ウェブサイト http://jssspn.jp/edu/ の「委員」をご確認ください.
(日本土壌肥料学雑誌 第93巻第6号 掲載(写真を除く))