土壌教育活動だより 95-4
日本土壌肥料学会福岡大会では「高校生による研究発表会」をハイブリッド形式で開催いたします.対面での発表のコアタイムは初日の9月3日(火)12:00~13:30にC会場で実施します.また, Slackを用いて9月3日(火)~8日(日)にオンライン発表を実施します.対面での発表は14課題,オンラインの発表は3課題です.多くの方の参加と,活発な議論をお願い致します.
土壌教育委員会の活動を報告します.土壌教育委員会は,2024年6月11日(火)に2024年度第1回土壌教育委員会をオンラインで開催しました.議事の内容は,昨年度の事業報告および今年度の事業と予算の確認,福岡大会における「高校生による研究発表会」の準備状況の確認と会誌におけるフォローアップ企画,動画制作をはじめとする土壌教育の教材開発,土壌教育活動等でした.
土壌教育委員会の事業で行った観察会の報告をいたします.6月1日に,宇都宮大学農学部附属農場において,栃木県立博物館の観察会「田んぼ物語①~土の観察と田植え」を開催いたしました.本観察会は,日本土壌肥料学会の後援を受け、土壌教育委員会の普及事業として開催しています.講師として平井英明顧問,会員の早川智恵氏(両氏とも宇都宮大学)が参加しました.内容は,日本土壌肥料学会のHPに掲載され,学会員のご家族の参加も誘う形となっています.土壌教育の国際ガイドライン(https://doi.org/10.20710/dojo.93.5_321)に則ると,地域固有の文化環境に身を置いて土壌に触れ感受することが,土壌の深い理解の第一歩であるとされたので,地域固有の文化環境の中に身を置き,土壌に触れ感受するという観点から本観察会を企画しました.その内容の概要は,①宇都宮大学農学部附属農場内の落葉広葉樹林下の土壌に素手で触れ、②その表土を活用して育成した苗を素手で苗箱より採取し,③それを素足で水田に入って素手で田植えをするという土壌教育実践法です.これまで実施してきた博物館主催の観察会の内容を,素手や素足で土壌を感受するという観点から,より充実させた内容となっています.参加者は,大人18名,中学生2名,小学生15名,幼児5名,博物館スタッフ4名,大学教員3名,学生アルバイト3名で,合計50名でした。森林表土のみで育成した苗,そこに菜種油粕・魚粉を添加して育成した苗,市販の化学肥料ベースの粒状培土の3種類の苗の生育の様子を観察した後,有機栽培水田圃場に,1株3本植で6条分を田植え紐に沿って有機質肥料で育成した苗を素手で植えました.この様子は,栃木県立博物館のHP(http://www.muse.pref.tochigi.lg.jp/news/2024/06/61.html)に掲載されています.次回は,8月24日です.3本植した水稲株を圃場で掘り取りを行い草丈や籾数の増加を調べることで,土壌の重要性や肥料の効果を感受する体験的土壌教育プログラムとなっています.
委員および会員による土壌教育活動を報告します.森圭子委員(埼玉県立川の博物館)は,同博物館において5月3~4日に,同博物館の「ゴールデンウィークまつり」の中で「土の足ざわりを楽しもう」を開催しました.田んぼの土(沖積土)と畑(黒ボク土)を入れたコンテナの土を裸足でふみ,その足ざわりを楽しんでどちらが好きかを投票してもらいました.保護者を含む参加者は274名でした.また併せて「かわはく周辺の土!」と題して土壌モノリス5本の展示を5月12日まで行いました.同委員は6月15日に同博物館において体験教室「泥だんごづくり」を催しました.赤い土をこねるところから仕上げに磨くところまでを行いました.参加者は19名でした.丹羽勝久委員(株式会社ズコーシャ)は,6月1日に「千曲川ワインアカデミー(千曲川ワインアカデミー | アルカンヴィーニュ 日本ワイン農業研究所 (jw-arc.co.jp)」に出講しました.本アカデミーも10周年であり,受講生はこれからワイン用ぶどうの栽培を目指す方や,ワインに関係する仕事を行っている方がほとんどです.参加者は対面で36名,WEB参加で15名でした.まずは座学にて一般的な土壌診断の話に加え,ワイン用ぶどうの話として,果実のアントシアニン含量,糖分,酸度,ポリフェノール含量等と土壌水分の関係について話題提供を行いました.その後,対面の受講生に対して傾斜地と平坦地の土壌断面を見せ,地形による土壌断面形態の違いを学習しました.会員の石倉究氏(道総研十勝農業試験場)は,6月11日に北海道帯広農業高等学校 農業科学科第2学年38名を対象に出前授業を行いました.はじめに教室内で麦の一生と秋まき小麦の肥培管理法について講義を行いました.次に圃場に出て,秋まき小麦の開花期の様子を観察し,穂数の多少を確認しました.上位葉だけではなく下位葉にも光があたっているかどうかを生徒たちに確認してもらい,光合成効率を最大限発揮するために必要な群落の姿を考察しました.最後に微地形によって茎数および穂数がどの程度変動してしまうかを確認してもらい,深さ50 cm程度の簡易的な断面調査から腐植含量や作土の厚さの違いが秋まき小麦の生育に影響を及ぼしている可能性について考察しました.次回は成熟期の収量調査の学習を予定しています.平井英明顧問(宇都宮大学)は,6月13日,20日に,2020年に群馬大学・宇都宮大学に設置された共同教育学部の必修科目「Forefront科目群(時代を先取りした先端課題解決科⽬群)」にある「環境教育」の中で「土と食」と題して理論編と実践編の2回の講義を担当しました.受講者は,群馬大学211名,宇都宮大学191名で、両大学の教育人間科学系,人文社会系,自然科学系,芸術・生活・健康系に属するすべての学生がこの授業を受講しています.学系を超えてすべての学生に,「環境教育」の中で次のような項目について,第9部門でのシンポジウムや土壌教育委員での活動を基にして積み上げてきました内容を伝えるようにと努めました.その内容の概要は,土壌の生成による形態と機能,土壌教育の国際ガイドラインの紹介,体験型土壌教育,土壌の語源からみた土や壌の意味,地名やアニメや音楽の中で取り上げられている土壌等について紹介をしました.
本欄では会員の皆様の土壌教育活動も紹介します.情報をお持ちの方は支部選出の土壌教育委員までお知らせください.なお,土壌教育委員会の現在の構成は公式ウェブサイト http://jssspn.jp/edu/ の「委員」をご確認ください.
(日本土壌肥料学雑誌 第95巻第4号 掲載)