土壌教育活動だより 95-6
委員による土壌教育活動を報告します.平井顧問と会員の早川智恵氏(宇都宮大学)は,8月24日に,宇都宮大学農学部附属農場において,栃木県立博物館の観察会「田んぼ物語②~土の観察と稲の観察」(http://www.muse.pref.tochigi.lg.jp/event/watch.html)において講師を務めました.当学会は2024年度に初めてこの観察会を後援し,土壌教育委員会では「教員研修およびその他の普及事業」における「土壌教育に関わる体験学習・観察会の開催および講師参画」の枠組みとして位置づけました.土壌教育の国際ガイドライン(https://doi.org/10.20710/dojo.93.5_321)に則ると,地域固有の文化環境に身を置いて土壌に触れ感受することが,土壌の深い理解の第一歩であるとされましたので,地域固有の文化環境の中に身を置き,土壌に触れ感受するという観点から本観察会が企画されました.その概要は,①附属農場内の落葉広葉樹林下の落葉をめくって表土に生息するミミズ等の小動物を探索する,②分解途中の落葉を篩い目の大きさの異なる篩でふるい分け,古いから落ちてきたものを観察して,より小さな動物を探索するとともに,小動物が排せつした粒状の土を観察する.この過程を経ることで,栄養が豊かになった土の性質を,その手触りを感受し学習する,③6月1日に水田に植えた苗が栄養豊かな表土から養分を吸収するとどの程度大きくなるのかを,田植えした水田でイネ株を素手で掘り取り観察する,④堆肥で育てたイネ株,化学肥料で育てたイネ株,肥料を加えないで育てたイネ株,それぞれを表土とともに掘り取り,その表土に素手で触れてもらい,その手触りを体感する,というものでした.これまで実施してきた博物館主催の観察会の内容を,素手や素足で土壌を感受するという観点を新たに組み込み,より充実させた内容となっています.参加者は,大人21名,小学生14名,幼児5名,博物館スタッフ4名,大学教員2名,学生アルバイト4名で,合計50名でした.
会員による土壌教育活動を報告します.石倉究氏(道総研十勝農業試験場)が9月18日に北海道帯広農業高等学校 農業科学科第2学年38名を対象に出前授業を行いました.はじめに,秋まき小麦の一生と肥培管理法について講義を行い,播種適期,播種床造成,播種深度の重要性を解説しました.次に,播種機を前にして播種深度を一定に保つための播種機の設定や,土壌の種類に合わせた播種床造成を解説し,実際に小麦を播種した上で,播種深度を確認しました.最後に,近年のトラクタに標準的に搭載されている自動操舵機能の利点を解説し,土壌に合わせたスマート農業の有効性について考察してもらいました.次回は小麦の越冬前調査を予定しています.谷昌幸氏(帯広畜産大学)が,9月18日に,大分県豊後高田市で開催された「九州沖縄土を考える会」で土壌断面観察会と講演を行いました.まず、豊後高田市呉埼の干拓地において土壌断面調査を行い,前島勇治氏と森下瑞貴氏(農研機構農業環境研究部門),島田紘明(帯広畜産大学)と一緒に,砂質な未熟低地土の特徴を説明するとともに,白ネギ栽培における土壌の管理や改良などについて生産者の方々と意見交換を行いました.次に,豊後高田市役所の会議室において,「土壌の力を引き出すために-土壌診断から養分バランスを見極める」と題した講演を行い,土壌診断値からどのようにして積極的な減肥につなげるについて説明するとともに,とくにリン酸施肥の見直しについて生産者の方々と論議しました.
支部における土壌教育活動を報告します.北海道支部では,2024年度秋季支部大会(12月5日)において,道内の高校生による研究発表会(ポスター発表)を,北海道教育委員会の後援を受け,実施する予定です.申し込みは3校,5課題です.タイトル,高校は次の通りです.「馬鈴薯におけるいも肥大効果を求めたバイオスティミラント(クエン酸)資材の実験」(北海道真狩高等学校),「地域未利用資源を活用した炭素循環農法の課題解決学習について」(北海道真狩高等学校),「北海道版リジェネラティブ農業実証試験 〜マメ科緑肥作物を用いた不耕起栽培〜」(北海道真狩高等学校),「生ゴミの堆肥化を応用し植物に良い土を作る」(札幌市立開成中等教育学校),「省耕起が畑地の土壌物理性に及ぼす長期的影響」(北海道帯広農業高等学校).なお,詳細は次の土壌教育活動便りにてお伝えします.
本欄では会員の皆様の土壌教育活動も紹介します.情報をお持ちの方は支部選出の土壌教育委員までお知らせください.なお,土壌教育委員会の現在の構成は公式ウェブサイト http://jssspn.jp/edu/ の「委員」をご確認ください.
(日本土壌肥料学雑誌 第95巻第6号 掲載)