土壌教育委員会がかかわる活動を紹介

高校生による研究発表会(岡山) 2020-09-08

2020年11月 5日 Posted in 主催行事 Posted in 高校生による研究発表会

 日本土壌肥料学会2020年度岡山大会では1日目の2020年9月8日(火)に岡山県教育委員会の後援を受け,恒例の「高校生による研究発表会」を開催しました.今年は新型コロナウイルスの影響で課外活動の継続が大変な状況の中,全国から12課題(8校)の発表申込がありました.本大会は初の試みとしてオンラインで開催され,高校生による研究発表会も一般発表と同様に各高校からLINC Bizを用いて発表が行われました.事前にシステムのリハーサルが行われ,発表会当日は大会参加者から各発表課題のポスターや発表動画に対して多数の質問やコメントが寄せられました.発表のコアタイム,そしてコアタイム以外の時間にも学会会期中にオンラインのチャット機能を介して熱心な質疑応答が行われました.

村山産業高等学校
村山産業高等学校におけるオンライン発表,質疑応答の様子

 会長,大会運営委員長および土壌教育委員による審査の結果,以下の通り,最優秀賞1課題,優秀賞3課題が選ばれました.

最優秀賞(1課題)
H-08 サトイモの苗生産から栽培,加工品開発に関する研究-サトイモを逆さに植えたら,収量がアップ?-(山形県立村山産業高等学校 農業部バイオテクノロジー班)

優秀賞(3課題)
H-05 ため池の「池干し」がリン循環に与える影響-播磨地方における2つのため池の比較-(加古川東高等学校 自然科学部地学班)

H-07 香川中央高校における緑のカーテン(ゴーヤ,パッションフルーツ等)栽培の取り組み-H29 年からR2 年にかけての実践報告-(香川県立香川中央高等学校 自然科学部)

H-10 腐植含量の異なる有機質肥料の施用がタマネギの収量に与える影響(北海道岩見沢農業高等学校 農業科学科 SS専攻)

北海道岩見沢農業高等学校1
優秀賞に選ばれた北海道岩見沢農業高等学校の収量調査風景

北海道岩見沢農業高等学校2
優秀賞に選ばれた北海道岩見沢農業高等学校農業科学科SS専攻の集合写真

 大会終了後,波多野会長(北海道大学),馬運営委員長(岡山大学),隅田委員長(日本大学)からの講評および最優秀賞,優秀賞の表彰を9月17日に学会HPにて公表しました.また,全発表課題に対して発表証明書と参加賞が贈られました.最優秀ポスター賞および優秀ポスター賞には表彰状および副賞が授与されました.

北海道岩見沢農業高等学校3
優秀賞を受賞し,表彰状と発表証明書を手にする北海道岩見沢農業高等学校

 参加校と題目は次の通りです.

発表題目学校名クラブ名等
1元政の竹再生プロジェクト(その1)-移植予定地の土壌断面と物理性-京都府立嵯峨野高等学校サイエンス部
2土壌の見えない能力 -荷電ゼロ点による土壌評価-京都府立嵯峨野高等学校校有林調査ラボ
3フェイスチャートによる各種森林土壌データの多変量解析京都府立嵯峨野高等学校校有林調査ラボ
4校有林における東屋の作製 -樹木の乾燥方法の検討-京都府立嵯峨野高等学校校有林調査ラボ
5ため池の「池干し」がリン循環に与える影響 -播磨地方における2 つのため池の比較-兵庫県立加古川東高等学校自然科学部地学班
6イシクラゲがもたらす肥料効果の実証智辯学園和歌山高等学校科学部
7香川中央高校における緑のカーテン(ゴーヤ,パッションフルーツ等)栽培の 取り組み - H29 年からR2 年にかけての実践報告-香川県立香川中央高等学校自然科学部
8サトイモの苗生産から栽培,加工品開発に関する研究 -サトイモを逆さに植えたら,収量がアップ?-山形県立村山産業高等学校農業部バイオテクノロジー班
9ソバにおける植物共生微生物の活用に関する研究 -菌株GCF4A,GCF9B-2 の持つ生育促進効果について-山形県立村山産業高等学校農業部バイオテクノロジー班
10腐植含量の異なる有機質肥料の施用がタマネギの収量に与える影響北海道岩見沢農業高等学校農業科学科SS専攻
11人間生活に必要不可欠な表土の重要性を伝える教育プログラムの評価作新学院高等学校
12日本の理科教育を受けてきた大学生への土についての知識・関心度調査栃木県立宇都宮女子高等学校

会長による講評
 日本土壌肥料学会会長の北海道大学の波多野です.皆さんには,高校生による研究発表会にご発表いただき大変ありがとうございました.皆さんの発表は土壌肥料学会の9つの部門(1土壌物理,2土壌化学・土壌鉱物,3土壌生物,4植物栄養,5土壌生成・分類・調査,6土壌肥沃度,7肥料・土壌改良資材,8環境,9社会・文化土壌学)すべてに関わる内容でした.いずれの研究内容もオリジナリティに溢れ,皆さんが一生懸命研究されたことが伝わりました.参加された皆様は今回研究してみて土壌肥料学が地域に密着した研究を行っていることをお感じになられたと思います.自分の目でみて面白いと思ったことや,なんとかしなければいけないと思うことが土壌肥料学の研究の動機になります.皆さんには大学に進まれたらさらに土壌肥料学の研究手法を学んで実際に研究をしていただけるようになると良いなあと思います.せっかくの機会ですので,もう一つお伝えしておきたいと思います.研究の最終産物は論文だということです.学会発表は時間の都合で論文のハイライトだけを示しています.原著論文は研究の背景,目的,方法,結果,考察,結論,参考文献の7項目で構成されています.ですから,今後はこの7項目を意識して研究を深めて欲しいと思います.今回の研究発表で皆さんはすでに目的,方法,結果をお持ちですので,先行研究と比較することができます.是非,参考文献を探して読んでみてください.言い伝えを記した古文書でも構いません.先行研究に述べられている背景や目的は必ずしも皆さんの動機と同じではないかもしれませんが,そのことにより知識が増えて幅が広くなりましょう.どうぞ是非勉強してみて下さい.今後の皆さんの益々のご発展を願っております.
(北海道大学 波多野 隆介)

大会運営委員長による講評
 コロナの影響で高校生の皆さんと倉敷でお会いできず,大変残念ですが,例年よりもたくさんの発表をしていただき,ありがとうございます.身近のものを研究の対象にして,深く掘り下げて研究されたことは大変素晴らしいです.今回の発表は土壌調査,肥料施与効果,微生物の接種効果など,研究内容が幅広く,それぞれ面白い成果が得られています.皆さんの成果が今後農業現場に役立つことを期待しています.ぜひ今のような探求心を持ち続けて,今後の勉強・研究に生かしてください.
(岡山大学 馬 建鋒)

土壌教育委員長による講評
 今回の高校生による発表会では,オンライン開催となり従来とは発表形式が異なったにもかかわらず,2019年度静岡大会に比べ6課題少ない全国から12課題の発表がありました.今回の発表の特徴として全発表課題について質疑・応答はチャットを利用して文章で行った点でした.従来であれば,発表終了後に個々の質問を忘れてしまうこともあったかと思いますが,今回は質疑・応答を保存すれば,発表終了後に再検討または次年度の研究遂行に生かせると思います.今回の研究発表会より,高校生による発表課題の増加には環境が許せば,オンライン開催も一つの方法であると考えられました.12課題の発表は校舎内,演習林の問題解決,農業生産,環境に関する課題,土壌教育に関する提案など広範囲にわたり,それぞれの発表はよく整理されたスライドを利用して行われました.身近に存在する土壌,肥料,植物栄養,食糧生産,環境に関する課題を取り上げ,その真理を探る過程は高校生活で貴重な経験であると思われます.今後も課題に取り組むこの姿勢を継続していただきたいと思います.
(日本大学 隅田 裕明)

土壌教育委員会:豊田 鮎