高校生による研究発表会(福岡) 2024-11-01(詳報)
日本土壌肥料学会2024年度福岡大会では「高校生による研究発表会」をハイブリッド形式で開催いたしました.
対面での発表は大会初日の9月3日(火)12:00~13:30にC会場で行いました.当日は全国から12校13課題の発表がありました.約30名の高校生はポスターの前で研究内容を説明し,大会参加者からの専門的な質問やコメントを受けて,熱心な議論を行いました.藤原土壌肥料学会長(東京大学),および土壌教育委員による審査の結果,最優秀ポスター賞1課題(発表番号H-S09広島県立西条農業高等学校 自然科学部),および優秀ポスター賞2課題(発表番号H-S02浅野中学・高等学校 浅野学園生物部,発表番号H-S08福岡県立糸島農業高等学校 地域イノベーション同好会)が選ばれました.発表会後に行われた表彰式では,藤原土壌肥料学会長と藤間土壌教育副委員長(山口大学)より講評があり,藤間土壌教育副委員長より全発表課題に対して発表証明書と参加賞が手渡されました.次いで,藤原会長より最優秀ポスター賞および優秀ポスター賞の表彰状,副賞が授与されました.
また, Slackを用いたオンライン発表は9月3日(火)~8日(日)に行い,期間中にチャット形式で質疑応答が行われました.台風の影響で急遽オンライン発表に変更した1課題を含め,3校4課題の発表がありました.発表期間終了後に土壌教育委員会で優秀ポスター賞の審査を行い,優秀オンラインポスター賞1課題(H−L03山形県立村山産業高等学校 サトイモ・芋煮研究班)が 選ばれました.
なお,受賞課題のうち公表の承諾を得られたポスターは,土壌教育委員会のHPで紹介します.
また,受賞課題の研究の概要や今後の目標等について,および発表課題の取り組みの動機,発表の感想,今後の意気込み等についてを会誌に掲載いたします.
写真:表彰式の様子
参加校と発表課題は以下の通りです.
対面発表の部 | 発表題目 | 学校名 | クラブ名等 |
---|---|---|---|
H-S01 | 遊休牧野利用によるバイオマス資源からのカリウム確保の試み | 北海道岩見沢農業高等学校 | 農業土木工学科環境アセスメント専攻班 |
H-S02 | バイオチャー散布が森林の炭素収支に与える影響と効果の持続期間の検証 | 浅野中学・高等学校 | 浅野学園生物部 |
H-S03 | 耕地化が黒ボク土の土壌断面形態に及ぼす影響 | 北海道士幌高等学校 | 畑作専攻班 |
H-S04 | 山梨県勝沼町、甲州ブドウ圃場の粘土質土壌 | 山梨県立日川高等学校 | 物理・地学部 SSH地学班 |
H-S05 | エコフィードのステージ別給与が黒毛和種の肥育に及ぼす影響~環境に配慮した美味しい牛肉生産を目指して~ | 青森県立三本木農業恵拓高等学校 | COW飼う'S |
H-S06 | 菌耕法が土壌成分及び高オレイン酸ヒマワリ栽培に及ぼす影響 | 青森県立三本木農業恵拓高等学校 | COW飼う'S |
H-S07 | リボベジにおいてダイコンの成長を促進させるのはどのような栽培条件か? | 東京農業大学第三高等学校 | 理数探究課程 |
H-S08 | コウジカビとカキガラ石灰で根こぶ病を抑える研究 | 福岡県立糸島農業高等学校 | 地域イノベーション同好会 |
H-S09 | 羽毛や髪を原料として作成した肥料の実証実験~硬質ケラチンを細菌の力で窒素化合物に分解~ | 広島県立西条農業高等学校 | 自然科学部 |
H-S10 | 挑戦!秋まきコムギの可変播種技術の開発~播種量と地形が収量に与える影響を探る~ | 北海道帯広農業高等学校 | 農業科学科ICT活用実践研究プロジェクトチーム |
H-S11 | 下水汚泥由来のリン酸肥料がタマネギの収量に及ぼす影響 | 北海道岩見沢農業高等学校 | 農業科学科SS専攻班3年 |
H-S12 | 畜ふんと植物残渣を活用した農業資材の開発に関する研究 | 岡山県立高松農業高等学校 | 畜産科学科 資源開発研究チーム |
H-S13 | 魚の廃棄物を0に!~魚の廃棄物で肥料を作ろう~ | 鹿児島県立鹿児島中央高等学校 | SSH普通科課題研究班 |
H-S14 | 魚粉を活用したアマモ専用肥料の開発〜天草ブルーカーボンニュートラルの実現にむけて〜 | 熊本県立天草高等学校 | 科学部 |
※課題番号H-S01の発表は台風の影響でオンライン発表に変更して発表しました.
オンライン発表の部 | 発表題目 | 学校名 | クラブ名等 |
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H-L01 | アイスプラントとの混植による塩ストレス緩和効果について~土壌編~ | 鳥取県立鳥取東高等学校 | 理数科 |
H-L02 | ソバにおける植物共生微生物の単離と利用-学校産エンドファイトによる施肥削減の可能性- | 山形県立村山産業高等学校 | エンドファイト研究班 |
H-L03 | 山形県におけるサトイモ生産の課題解決に関する取り組み-種芋の保存条件や収益性向上に関する検討 | 山形県立村山産業高等学校 | サトイモ・芋煮研究班 |
写真:最優秀ポスター賞受賞の広島県立西条農業高等学校の活動風景 1
写真:最優秀ポスター賞受賞の広島県立西条農業高等学校の活動風景2
写真:優秀ポスター賞受賞の浅野中学・高等学校の活動風景1
写真:優秀ポスター賞受賞の浅野中学・高等学校の活動風景2
写真:優秀ポスター賞受賞の福岡県立糸島農業高等学校の活動風景1
写真:優秀ポスター賞受賞の福岡県立糸島農業高等学校の活動風景2
写真:優秀オンラインポスター賞受賞の山形県立村山産業高等学校の活動風景1
写真:優秀オンラインポスター賞受賞の山形県立村山産業高等学校の活動風景2
- 学会長による講評:
- 皆さん,北は北海道青森から,また鹿児島からも参加し,活発に発表していただきありがとうございました.何人かの方とは発表を伺いお話しさせていただきましたが,意欲に満ちた研究や発表を伺い私にとっても刺激を受けました.今年も猛暑でしたが,将来の農業や環境保全を担うのは若い皆さんです.研究を通じて地域などの課題を解決しようとする研究は,試行錯誤の連続かもしれませんが,重要な活動だと思います.研究に限ったことではありませんが,問題解決には,自分の考えをしっかり持ち集中して取り組ことが大切だと思います.これからの皆さんの活動にこの研究発表が役立つことを祈ります.もう一つお願いしたいことは,自分が調査した結果をきちんと記録に残し公表するということです.皆さんの調査の結果は将来,誰かがどこかで似たような問題に直面した時に,とても役に立つ可能性があります.そのように役立つには,研究の内容を記録に残し公表することが大切です.論文などにまとめることができれば,将来にわたっても記録は残り,利用されます.皆さんのこれまでの努力を更に活かす上でも,論文や記録に残していただきたいと思います.
- (東京大学:藤原 徹)
- 土壌教育副委員長による講評:
- 今年度も高校生による研究発表会に多くの御参加をありがとうございます.発表を見せて頂きますと,その内容が,地域の問題解決に関わるものから,地球環境問題に関わるものまで非常に多岐にわたり,また,一部の研究は大人が考えつかないような,若いフレッシュな発想を基にしたものも有り,非常に楽しい時間を過ごさせて頂きました.コアタイムの時間,初めは緊張して上手く説明出来なくても,しばらくすると堂々と説明出来るようになった生徒さんもおられ,ほんの短い時間でも成長している姿に感銘を受けました.今回発表されて,様々なコメントやアドバイスが有ったと思います.それらを踏まえて,今後更に研究が発展されることを願っております.なお,来年度は新潟で大会が開催される予定です.今回発表会に参加して良かったと思われたのなら,是非そのことも含めて後輩に伝えて頂き,来年度以降も参加して頂ければ嬉しいです.
- (山口大学:藤間 充)