土壌教育委員会がかかわる活動を紹介

土壌教育活動だより 95-3

2024年6月17日 Posted in お知らせ Posted in 土壌教育活動だより

 2024年4月より,土壌教育委員会委員1名が交代しました.新しい委員は,九州支部:赤木功氏(鹿児島大学)です.

 日本土壌肥料学会2024年度福岡大会において,高校生による研究発表会を開催いたします.対面によるポスター発表とオンライン発表のハイブリッド形式での開催を予定しています.対面によるポスター発表は,大会の初日(9月3日)に行う予定です.詳細は決まり次第,土壌教育委員会公式Webサイトに掲載いたします.

 委員および会員による土壌教育活動を報告します. 4月11日に石倉究氏(道総研十勝農業試験場)が北海道帯広農業高等学校農業科学科第2学年38名を対象に出前授業を行いました.はじめに秋まき小麦の起生期の様子を全体的に俯瞰し,黄化した葉先とタイヤ跡で根が浮いた様子を観察しました.これらの症状が発生する原因について生徒たちに考察してもらい,タイヤ跡で葉を傷つけたり播種に失敗したりしたわけではなく,冬枯れと凍上断根であることを説明しました.次に秋まき小麦の起生期茎数を把握する意義を解説し,茎数の数え方を説明しました.まずは1名ずつ株を抜き取ってもらい,葉と茎の区別を練習しました.その後,班に別れて1条1 m長で茎数を数えてもらい,面積あたりの茎数に換算してもらいました.昨年秋は気温が高く,全般的に茎数が多いこと,播種量が7 kg/10aの区よりも11 kg/10aの区で茎数が多いことを確認し,今後の窒素施肥管理の重要性を確認しました.次回は幼穂形成期頃の学習を予定しています.4月22日に丹羽委員と石倉究氏(道総研十勝農業試験場),北海道士幌高等学校アグリビジネス科2年生の13名を対象に土壌断面研修を実施しました.具体的には高校近傍の畑地において隣接防風林(未耕地)と耕地の土壌断面形態を比較しました.生産者からは圃場端(相対的な地形的底部)の排水が悪くて播種すらできないという話を聞いています.まずは未耕地を掘りましたが,非常に膨軟な黒ボク土が出現し,断面中に斑紋は確認されませんでした.それに対して防風林そばの耕地では作土直下から非常に堅密で,穴を掘るのに一苦労しました.耕地側の土壌断面も未耕地と同様,斑紋がなく,元々は排水の良い土壌であることが伺えました.しかし,深さ約20〜50cmの間の土壌硬度が非常に高く,場所によっては30mm以上の数値を示しました.生産者さんの方で,対策として心土破砕が行われていますが,破砕跡が深さ30cm程度に留まり,堅密土層の破砕に至っていないことも確認できました.以上のことから,圃場端の排水不良は人為的な要因による土壌のコンパクションと判断しました.生産者からは隣接防風林に白樺を植林した後に,排水が悪化したという話を聞いています.もしかしたら,白樺植林時の工事作業時に,圃場端で何等かの踏圧を受けるようなことが発生していたのかもしれせん.私自身(丹羽)も排水良好な黒ボク土がコンパクションを受け,播種ができないほど排水不良になると思っていませんでしたので,大変興味深い1日となりました.

 本欄では会員の皆様の土壌教育活動も紹介します.情報をお持ちの方は支部選出の土壌教育委員までお知らせください.なお,土壌教育委員会の現在の構成は公式ウェブサイト http://jssspn.jp/edu/ の「委員」をご確認ください.

(日本土壌肥料学雑誌 第95巻第3号 掲載)