委員会のあゆみ:1982〜1995年度
わが国の初等中等教育における土壌教育の強化を図るために、(社)日本土壌肥料学会に非公式に土壌教育検討会が1982年度に設けられ、さらに1983年度から土壌教育強化委員会として改組され公式に設置されたのが、現在の土壌教育委員会の始まりです。その主な活動として、1)初等中等教育の現場での土壌教育の実態調査、2)教育現場で使用効果がある教育手引書の作成、3)土壌教育強化のための具体的方策の検討などが計画されました。この最初の委員会は、1985年度まで同じメンバーで活動しましたが(木内知美委員長、大羽裕・島根茂雄・都留信也・永塚鎮男・浜田竜之介・松井健・和田秀徳の7名の委員)、この期間の最大の活動成果は、初等中等教育における土壌教育についての現場小・中学校教師の考え方と実態についての全国アンケート(小学校271校、中学校170校)を実施して、土壌教育の現状・実態把握と、それに基づいた基本的な活動指針を策定した点です。つまり、1)小・中学校教員の土壌に関する知識向上、2)自然科学系博物館等における土壌標品(モノリス)の展示促進、3)自然観察会などにおける土壌解説の導入、4)小・中学校における土壌関連の教科(理科・社会科・技術家庭科)の教科書記載内容の検討、5)文部省・教科書出版社などへの土壌教育教科についての意見申し入れなど具体的活動指針が策定されました。委員会の名称が1984年に土壌教育委員会と改められ今日に至っていますが、その具体的な活動内容は、初代木内委員長がまとめた基本計画にほぼ沿ったもので、現在まで時間はかかったものの着実に歩んで来ました。
委員会のあゆみ:1996〜2001年度
1996年度から1999年度の4年間では、東照雄委員長のもと、以下に述べるいくつかの重要な活動が展開されました。1)1997年度には、文部省の学習指導要領の1998年度改訂に際し、関連各教科の土壌に関する記載内容の改善を具体的な形で提案・要望を行いました。このような活動は、既に、1985年度に、土壌教育に関する要望書を、都道府県・大学などの教育関係者、国会議員、博物館などおよそ土壌教育に関係した機関・人々に送付して、土壌教育強化への理解を社会に求めたことがあり、その経験も活かして、土壌教育に関わる社会状況の変化を考えて改めて行ったものでした。しかし、文部省からは要望書に一定の理解を示して頂いたものの、残念ながら具体的な成果はなく、この種の活動の限界性も認識せざるを得なかったのも事実です。2)1992年度から計画されていた初等中等教育の現場の教師を対象にした「土をどう教えるかー新たな環境教育教材-」(118ページ、古今書院、東京)が刊行されました(1998年度)。この本は、現場の先生への教材の提供に重点がおかれ、総合学習の時間にも活用できるような環境教育を意識したものですが、広く現場の先生方に活用されています。今後とも、時代に即したこのような教材本は、継続的に改訂・改善を行いながら、刊行する必要があると考えています。3)全国に10ヶ所ある自然観察の森施設を活用して、まず、茨城県牛久市の牛久自然観察の森で、土壌観察会「土となかよくなろう」を開催しました(1999年度)。土壌教育委員会として初めての試みであり、参加者の年齢層も幼稚園生から70台の方々まで幅広く、土の観察会のやり方について改めて検討する良い機会となりましたが、これを契機に、後で述べるように、毎年1回ですが全国の自然観察の森で現在まで継続的に開催して来ています。
委員会のあゆみ:2002年度〜
その後、2002年度と2003年度には、平井英明委員長を中心にして、福岡の油山自然観察の森と仙台の太白山自然観察の森で土壌観察会を、それぞれ、開催しました。これで、全国に10ヶ所ある「自然観察の森」の内、半分の5ヶ所で開催したことになります。まだまだ、この観察会のやり方も工夫が必要と考えていますが、2004年度には福田直委員長を中心にして、北海道の栗山町「生きものふれあいの里」で土壌観察会をおこなうことが既に決定しています。また、これも重要なことですが、2004年9月に福岡の九州大学で開催される土壌肥料学会で、現場の先生を対象にした土壌教育ワークショップを開催することになりました。この試みも土壌教育委員会として初めてのもので、SPP事業(文部科学省のサイエンス・パートナーシップ・プログラム事業)にも採択され、今後のさらなる展開を期待しているところです。