土壌教育委員会がかかわる活動を紹介

土壌教育活動だより 96-6

2025年12月19日 Posted in お知らせ Posted in 土壌教育活動だより

 日本土壌肥料学会新潟大会では「高校生による研究発表会」をハイブリッド形式で開催いたしました.対面での発表は,大会初日の9月17日(水)12:00~13:30に大会会場エントランススペースで行いました.当日は全国から10校16課題の発表がありました.約50名の高校生はポスターの前で研究内容を説明し,大会参加者からの専門的な質問やコメントを受けて,熱心な議論を行いました.信濃土壌肥料学会長(北海道大学),および土壌教育委員による審査の結果,最優秀ポスター賞1課題(発表番号H-S08広島県立西条農業高等学校 自然科学部),および優秀ポスター賞2課題(発表番号H-S01愛媛県立伊予農業高等学校 伊予農希少植物群保全プロジェクトチーム,発表番号H-S13山形県立村山産業高等学校 農業科学部サトイモ・芋煮研究班)が選ばれました.発表会後に行われた表彰式では,信濃土壌肥料学会長と森土壌教育委員長(埼玉県立川の博物館)より講評があり,森土壌教育委員長より全発表課題に対して発表証明書と参加賞が手渡されました.次いで,信濃会長より最優秀ポスター賞および優秀ポスター賞の表彰状,副賞が授与されました.また, Slackを用いたオンライン発表は9月8日(月)~24日(水)に行い,期間中にチャット形式で質疑応答が行われました.7校13課題の発表がありました.発表期間終了後に土壌教育委員会で審査を行い、最優秀オンラインポスター賞1課題(発表番号H-L04青森県立名久井農業高等学校 FLORA HUNTERS),優秀オンラインポスター賞1課題(H-L02 青森県立名久井農業高等学校 FLORA HUNTERS & Jr.)が選ばれました.発表会・表彰式などの写真は後日土壌教育委員会のHPに掲載いたします.

 土壌教育委員会の活動を報告します.土壌教育委員会は,9月19日(金)に2025年度第2回土壌教育委員会を開催しました.議事の内容は,高校生による発表会オンラインの部の表彰について,出版企画について,Soil Judging Contest関連事業について,高校生による研究発表会フォローアップ企画について等でした.

 委員による土壌教育活動を報告します.森圭子委員(埼玉県立川の博物館)は, 5月3日(土)に同博物館のゴールデンウィークまつりの中で「土の足ざわりを楽しもう」を開催しました.田んぼの土(沖積土)と畑(黒ボク土)を入れたコンテナの土を裸足でふみ,その足ざわりを楽しんでどちらが好きかを投票してもらいました.保護者を含む参加者は64名でした.また併せて「田んぼの土いろいろ」と題して土壌モノリス5本の展示を5月11日(日)まで行いました.また,第75回全国植樹祭応援事業である「川でつながる森と人」のパネル展示に合わせて埼玉県民の森の土(ポドゾル・黒ボク土)と県内の水田のモノリス(沖積土)など合計5本を2月4日(火)~6月22日(日)まで展示しました.同委員は5月17日(土)に同博物館において体験教室「泥だんごづくり」を催しました.荒木田土を用いてこねるところから仕上げに磨くところまでを行いました.参加者は25名でした.同委員は同博物館において7月20日にワークショップ「土の中の生きもの」を開催しました.肉眼で見つける方法,ツルグレン装置で集める方法を紹介し,観察してもらいました.参加者は66名でした.福田直顧問(武蔵野学院大学)は,8月12日(火)~15日(金)に子どもゆめ基金助成を受けて科学体験活動「土の探究(たんきゅう)―土のふしぎをさぐろう!」を狭山市立水富公民館で開催・実践しました.参加者は福田顧問と補助2名,狭山市内の公立小学校15校(4年生~6年生対象)から募集した9~12名(実施日により変化)の児童ら、2~3名の保護者でした。内容は,「土の生成」,「土の断面」,「土の生きもの」「土の呼吸」などの4テーマからなり,講義,観察実験,工作実習,ディスカッション,発表を行いました.観察実験は「土の粒子組成」,「土の断面観察」,「土壌動物の観察・調査」,「土の呼吸測定」,工作は「土の形成過程模型づくり」,「土のミニモノリス(断面標本)づくり」などを実践しました.ディスカッション(15日)では,土の温度と呼吸量の測定・両者の相関図を作成後,「地球温暖化と土の呼吸の増大」について話し合いました.活動終了後の児童の感想では,「自分で作ったツルグレン装置を使って、いろいろな土の動物の種類を見てみたい」,「温暖化の影響が土にも及ぶことにおどろいた」,「落ち葉が土になっていく標本を作って、土のでき方がとてもよくわかった」,「自分で作った土のミニモノリスを持ち帰って,土についていろいろと考えていきたい」などがあり、好評でした。

 会員による土壌教育活動を報告します.谷昌幸氏(帯広畜産大学)は,8月24日(日)に帯広畜産大学で行われたササカワ・アフリカ財団十勝視察において講師を務めました.TICAD9のために来日したササカワ・アフリカ財団の戦略パートナーシップ・ディレクターを始めとするアフリカ各地のマネージャーやディレクターを対象に,十勝の土壌特性と農業生産の関係について講義を行うとともに,アフリカ各国での作物栽培における土壌診断と土壌改良の重要性について意見交換を行いました.参加者はササカワ・アフリカ財団視察団11名でした.同氏は,9月26日(金)に北海道真狩農業高等学校圃場で行われた令和7年度未来を創る北海道フードアグリ発信事業の出前講座の講師を務めました.上記高校の2・3年生を対象に,同校圃場において「土壌断面調査について」講義と実習を行いました.圃場の2カ所を選定し,生徒に断面を掘削してもらうとともに,断面の観察方法や層位分けなどについて実習を行いました.とくに,羊蹄山および有珠山に由来する火山灰の観察,それらの化学性や物理性などが作物生産性に及ぼす影響について説明しました.参加者は同校有機農業コース2・3年生13名でした.同氏は,同日に同場所で行われた令和7年度全国高等学校農場協会北海道支部道南・道央地区研修会後志管内高等学校農業教育研究会の講師を務めました.道南・道央地区農業高等学校教員約40名を対象に,同校圃場において「土壌の物理性診断と改良-土壌断面調査から土壌の成り立ちと素性を理解する-」講義と実習を行いました.圃場の6カ所を選定し,教員に断面を掘削してもらうとともに,断面の観察方法や層位分けなどについて実習を行いました.とくに火山灰土層の判定のための活性アルミニウムテスト,野外土性の判定などについて説明し,土壌断面調査への理解を深めました.石倉究氏(道総研十勝農業試験場)は,10月20日(月)に開催された北海道中小企業家同友会とかち支部農業経営部会10月例会において報告者を務めました.本会は対面とオンラインのハイブリッドで開催され,十勝管内の農業経営者および農業関連企業の経営者など16名が集まり,近年の農業現場で導入が進められているさまざまな可変技術(可変施肥,可変播種,セクションコントロール)について十勝農業試験場で得られた成果や取り組み事例が紹介されました.その中で、石倉氏は圃場内の生育・収量が窒素肥沃度に応じて変動している場合は窒素可変施肥が有効であるという成果や,可変施肥では対応しきれない状況で可変播種が有効になり得る事例を紹介しました.

 支部における土壌教育活動を報告します.北海道支部では,10月1日(水)〜2日(木)に第25回日本土壌肥料学会北海道支部野外巡検を開催しました.企画者は谷昌幸氏(帯広畜産大学),石倉究氏(道総研十勝農業試験場),丹羽勝久委員((株)ズコーシャ)の3名で,1日は苫小牧演習林の露頭、未耕地の土壌断面から,近傍の樽前山由来のテフラの堆積を観察し、2日は樽前山由来のテフラを母材とする圃場の土壌断面を河岸段丘上部,下部で観察し,断面を見ながら農業上の課題について議論を行いました.参加者は1日が32名、2日は28名でした.本巡検は主に学会員向けのイベントですが,学会員以外に両日とも日高農業改良普及センター,日本軽種馬協会,富良野市から,1日には岩見沢農業高校の教員1名と学生3名が参加しました.さらに2日には巡検参加者に加え,圃場における土壌断面の手配を行って頂いたJAとまこまい広域の皆様,地元農協青年部の皆様も複数名集まり,大変賑やかな中での研修となりました.なお,本巡検の詳細は支部のホームページに記載しています(https://drive.google.com/file/d/148gp_sKxjxXcM74E5BNHwVhtoWuTeZb0/view).

 本欄では会員の皆様の土壌教育活動も紹介します.情報をお持ちの方は支部選出の土壌教育委員までお知らせください.なお,土壌教育委員会の現在の構成は公式ウェブサイト https://jssspn.jp/edu/ の「委員」をご確認ください.

(日本土壌肥料学雑誌 第96巻第6号 掲載)