原発事故・津波関連情報
東日本大震災10年にあたり
日本土壌肥料学会会長 波多野隆介
今日2021年3月11日、東日本大震災10年を迎えるにあたり、震災によりお亡くなりになられた方々へ改めて哀悼の意を捧げるとともに、被災された方々にお見舞い申し上げます。そして今なお復興の途上にある方々には1日も早い日常生活への復帰を心からお祈り申し上げます。
この震災による農林水産関係の被害額は2兆3,800億円(阪神淡路大震災の約
27倍、新潟県中越地震の約18倍)に達し、津波により被災した農地面積は2万3,600
ヘクタール(被災6県の農地面積の2.6%)に及ぶ膨大なものでありました。
東京電力福島第一原子力発電所の事故により空中に放出された放射性物質は、主に第一原発の北西方向に降下し、水田5,900ヘクタールと畑3,000ヘクタールの土壌が高濃度の放射性セシウムによって汚染されました(Takata et al., 2014)。さらに、森林、草地、樹園地を含めて、東日本の17都県の広い範囲が放射性セシウムによる汚染の被害を受けました。
日本土壌肥料学会は、土壌と植物栄養の基礎知識を有し、安心安全で持続可能な土壌の利用と作物生産の技術構築を専門とする学会として、東日本大震災で生じた土壌劣化・放射能汚染の問題の解決に尽力してまいりました。これまで多くの会員が研究に従事し、その成果を年次大会・支部大会における発表やシンポジウムの場で議論するとともに、学術論文・資料・総説として発表し、広く国内外にその知見をひろめてまいりました。
震災直後の2011年3月末には「土壌・農作物等への原発事故影響WG」および「津波による農地の塩害WG」を立ち上げて先行研究の知見をレビューし、逐次ホームページに掲載しました(http://jssspn.jp/info/nuclear/)。
また、震災1年後の2012年には、「東日本大震災・原発事故による農耕地および農作物被害と復興対策~1年後の現状認識~」( http://jssspn.jp/info/nuclear/2012.html
)を、5年目の2016年には、「東日本大震災被災地の農業再生を支える対策技術研究の貢献と課題~5年後の現状認識~」( http://jssspn.jp/info/nuclear/2016.html
)を学会主催の「土と肥料の講演会」のテーマとし、節目となる年に被災地の状況と取組むべき研究課題について情報共有を図りました。
震災10年目にあたる2021年は、土と肥料の講演会「東日本大震災10年:被災農地の復興における土壌肥料学の貢献」(2021年5月22日午後15時~16時40分、日比谷図書文化館(千代田区日比谷公園))を開催するとともに、シンポジウム「原発事故から10年-これまで・今・これからの農業現場を考える」(2021年11月5日10時20分~16時30分・パルセいいざか(福島市飯坂町))を開催します。
日本土壌肥料学会は被災地の一日も早い復興を達成するために、今後も関連の学協会、国および地域機関と協力しながら安心安全な土壌の利用と作物生産のための技術構築に関する科学的知見の集積に努めていく所存ですので、どうぞよろしくお願い致します。
最後になりましたが、コロナ禍の中、皆様にはくれぐれもご健康に留意されて、ご活躍いただきたいと思います。
(2021年3月11日)