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事務局より

2023年度「土と肥料」の講演会の概要(2023.5.20)

 2023年5月20日(土)に東京大学山上会館にて開催された通常総会後に、「土と肥料」の講演会が同会場で行われ、54名の参加者がありました。また、会員限定対象のオンライン参加の試行に30名が参加しました。

 最近の原料、エネルギーの高騰に円安も相俟って肥料価格が高騰していますが、収量・収益確保のためには、適正な施肥管理が必要で、やみくもに肥料を減らすことには問題があります。そこで、本年度の講演会では、「肥料高騰における施肥管理の効率化、土壌肥料からのアプローチ」をテーマとして、緑肥の肥効活用による減肥技術と水田土壌のカリ収支から適正施肥を行う指針について講演をいただきました。


 鮎澤純子氏(長野県 農政部 農業技術課 専門技術員)には「越冬ライムギおよびソルガムを用いたレタスの窒素削減技術の開発」と題してご講演頂きました。鮎澤氏は、露地圃場の利用度が高い長野県のレタス産地において,越冬ライムギ(10月~11月播種,翌年3月~4月すき込み,草丈30 cm)を緑肥として導入すると慣行基肥窒素量を3~5割削減できること,ソルガム(5月~6月の6週間栽培,草丈141 cm)を緑肥として導入すると,慣行基肥窒素量を5割削減できることを紹介されました.従来,土壌の物理生・化学性・生物性の改善など土つくり効果に焦点が当てられてきた緑肥導入ですが,緑肥がレタスの減肥栽培を可能にし,緑肥の種子や機械作業などのかかり増しを勘案しても所得増となる可能性も示されました。


20230526_0001.png 鮎澤 純子 氏


 久保寺 秀夫氏(農研機構 農業環境研究部門 土壌環境管理研究領域長)には、「水田土壌のカリ収支を踏まえた水稲のカリ適正施用指針」についてご講演頂きました。水稲へのカリ施用量を半減からゼロにしても減収が認められないケースが多く,施肥以外のカリ供給についてのデータがあまりなく,カリ減肥の可能性やその持続性などは不明なことが多い状況です。そこで,水稲栽培におけるカリ適正施用の考え方として,カリ欠乏による生育不良は起こさせないこと,カリ収支をマイナスにしないこと,交換態カリ量が20 mg/100g以上あった場合に減肥を行うこと,粗粒質でCECが低い土壌では減肥しないことなどをとりまとめた指針を紹介いただきました。


20230526_0002.png 久保寺 秀夫氏


 本講演会は、土壌肥料の立場から肥料高騰に対する施肥管理の効率化を考える貴重な機会となりました。講演者と参加者の皆様に感謝申し上げます。

 なお、講演要旨およびスライドは、後日学会ホームページに掲載予定です。



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