土壌教育活動だより 95-6
委員による土壌教育活動を報告します.平井顧問と会員の早川智恵氏(宇都宮大学)は,8月24日に,宇都宮大学農学部附属農場において,栃木県立博物館の観察会「田んぼ物語②~土の観察と稲の観察」(http://www.muse.pref.tochigi.lg.jp/event/watch.html)において講師を務めました.当学会は2024年度に初めてこの観察会を後援し,土壌教育委員会では「教員研修およびその他の普及事業」における「土壌教育に関わる体験学習・観察会の開催および講師参画」の枠組みとして位置づけました.土壌教育の国際ガイドライン(https://doi.org/10.20710/dojo.93.5_321)に則ると,地域固有の文化環境に身を置いて土壌に触れ感受することが,土壌の深い理解の第一歩であるとされましたので,地域固有の文化環境の中に身を置き,土壌に触れ感受するという観点から本観察会が企画されました.その概要は,①附属農場内の落葉広葉樹林下の落葉をめくって表土に生息するミミズ等の小動物を探索する,②分解途中の落葉を篩い目の大きさの異なる篩でふるい分け,古いから落ちてきたものを観察して,より小さな動物を探索するとともに,小動物が排せつした粒状の土を観察する.この過程を経ることで,栄養が豊かになった土の性質を,その手触りを感受し学習する,③6月1日に水田に植えた苗が栄養豊かな表土から養分を吸収するとどの程度大きくなるのかを,田植えした水田でイネ株を素手で掘り取り観察する,④堆肥で育てたイネ株,化学肥料で育てたイネ株,肥料を加えないで育てたイネ株,それぞれを表土とともに掘り取り,その表土に素手で触れてもらい,その手触りを体感する,というものでした.これまで実施してきた博物館主催の観察会の内容を,素手や素足で土壌を感受するという観点を新たに組み込み,より充実させた内容となっています.参加者は,大人21名,小学生14名,幼児5名,博物館スタッフ4名,大学教員2名,学生アルバイト4名で,合計50名でした.
会員による土壌教育活動を報告します.石倉究氏(道総研十勝農業試験場)が9月18日に北海道帯広農業高等学校 農業科学科第2学年38名を対象に出前授業を行いました.はじめに,秋まき小麦の一生と肥培管理法について講義を行い,播種適期,播種床造成,播種深度の重要性を解説しました.次に,播種機を前にして播種深度を一定に保つための播種機の設定や,土壌の種類に合わせた播種床造成を解説し,実際に小麦を播種した上で,播種深度を確認しました.最後に,近年のトラクタに標準的に搭載されている自動操舵機能の利点を解説し,土壌に合わせたスマート農業の有効性について考察してもらいました.次回は小麦の越冬前調査を予定しています.谷昌幸氏(帯広畜産大学)が,9月18日に,大分県豊後高田市で開催された「九州沖縄土を考える会」で土壌断面観察会と講演を行いました.まず、豊後高田市呉埼の干拓地において土壌断面調査を行い,前島勇治氏と森下瑞貴氏(農研機構農業環境研究部門),島田紘明(帯広畜産大学)と一緒に,砂質な未熟低地土の特徴を説明するとともに,白ネギ栽培における土壌の管理や改良などについて生産者の方々と意見交換を行いました.次に,豊後高田市役所の会議室において,「土壌の力を引き出すために-土壌診断から養分バランスを見極める」と題した講演を行い,土壌診断値からどのようにして積極的な減肥につなげるについて説明するとともに,とくにリン酸施肥の見直しについて生産者の方々と論議しました.
支部における土壌教育活動を報告します.北海道支部では,2024年度秋季支部大会(12月5日)において,道内の高校生による研究発表会(ポスター発表)を,北海道教育委員会の後援を受け,実施する予定です.申し込みは3校,5課題です.タイトル,高校は次の通りです.「馬鈴薯におけるいも肥大効果を求めたバイオスティミラント(クエン酸)資材の実験」(北海道真狩高等学校),「地域未利用資源を活用した炭素循環農法の課題解決学習について」(北海道真狩高等学校),「北海道版リジェネラティブ農業実証試験 〜マメ科緑肥作物を用いた不耕起栽培〜」(北海道真狩高等学校),「生ゴミの堆肥化を応用し植物に良い土を作る」(札幌市立開成中等教育学校),「省耕起が畑地の土壌物理性に及ぼす長期的影響」(北海道帯広農業高等学校).なお,詳細は次の土壌教育活動便りにてお伝えします.
本欄では会員の皆様の土壌教育活動も紹介します.情報をお持ちの方は支部選出の土壌教育委員までお知らせください.なお,土壌教育委員会の現在の構成は公式ウェブサイト http://jssspn.jp/edu/ の「委員」をご確認ください.
(日本土壌肥料学雑誌 第95巻第6号 掲載)
高校生による研究発表会(福岡) 2024-11-01(詳報)
日本土壌肥料学会2024年度福岡大会では「高校生による研究発表会」をハイブリッド形式で開催いたしました.
対面での発表は大会初日の9月3日(火)12:00~13:30にC会場で行いました.当日は全国から12校13課題の発表がありました.約30名の高校生はポスターの前で研究内容を説明し,大会参加者からの専門的な質問やコメントを受けて,熱心な議論を行いました.藤原土壌肥料学会長(東京大学),および土壌教育委員による審査の結果,最優秀ポスター賞1課題(発表番号H-S09広島県立西条農業高等学校 自然科学部),および優秀ポスター賞2課題(発表番号H-S02浅野中学・高等学校 浅野学園生物部,発表番号H-S08福岡県立糸島農業高等学校 地域イノベーション同好会)が選ばれました.発表会後に行われた表彰式では,藤原土壌肥料学会長と藤間土壌教育副委員長(山口大学)より講評があり,藤間土壌教育副委員長より全発表課題に対して発表証明書と参加賞が手渡されました.次いで,藤原会長より最優秀ポスター賞および優秀ポスター賞の表彰状,副賞が授与されました.
また, Slackを用いたオンライン発表は9月3日(火)~8日(日)に行い,期間中にチャット形式で質疑応答が行われました.台風の影響で急遽オンライン発表に変更した1課題を含め,3校4課題の発表がありました.発表期間終了後に土壌教育委員会で優秀ポスター賞の審査を行い,優秀オンラインポスター賞1課題(H−L03山形県立村山産業高等学校 サトイモ・芋煮研究班)が 選ばれました.
なお,受賞課題のうち公表の承諾を得られたポスターは,土壌教育委員会のHPで紹介します.
また,受賞課題の研究の概要や今後の目標等について,および発表課題の取り組みの動機,発表の感想,今後の意気込み等についてを会誌に掲載いたします.
写真:表彰式の様子
土壌教育活動だより 95-5
日本土壌肥料学会福岡大会では「高校生による研究発表会」をハイブリッド形式で開催いたしました.対面での発表は大会初日の9月3日(火)12:00~13:30にC会場で行いました.当日は全国から12校13課題の発表がありました.約30名の高校生はポスターの前で研究内容を説明し,大会参加者からの専門的な質問やコメントを受けて,熱心な議論を行いました.藤原土壌肥料学会長(東京大学),および土壌教育委員による審査の結果,最優秀ポスター賞1課題(発表番号H-S09広島県立西条農業高等学校 自然科学部),および優秀ポスター賞2課題(発表番号H-S02浅野中学・高等学校 浅野学園生物部,発表番号H-S08福岡県立糸島農業高等学校 地域イノベーション同好会)が選ばれました.発表会後に行われた表彰式では,藤原土壌肥料学会長と藤間土壌教育副委員長(山口大学)より講評があり,藤間土壌教育副委員長より全発表課題に対して発表証明書と参加賞が手渡されました.次いで,藤原会長より最優秀ポスター賞および優秀ポスター賞の表彰状,副賞が授与されました.発表会・表彰式などの写真は後日土壌教育委員会のHPに掲載いたします.また, Slackを用いたオンライン発表は9月3日(火)~8日(日)に行い,期間中にチャット形式で質疑応答が行われました.3校4課題の発表がありました.発表期間終了後に土壌教育委員会で優秀ポスター賞の審査を行いました.受賞課題は土壌教育委員会のHPに掲載いたします.
土壌教育委員会の活動を報告します.土壌教育委員会は,2024年9月5日(木)に2024年度第2回土壌教育委員会を開催しました.議事の内容は,高校生による発表会オンライン開催の表彰について、出版企画について、高校生による研究発表会フォローアップ企画について等でした.
委員による土壌教育活動を報告します.福田顧問(武蔵野学院大学)は,7月23日(火)に飯能市市民会館にて子どもゆめ基金助成を受けて開催された「科学体験活動―ナラ枯れ現象から考える里山のあり方」において講師を務めました.出席者は小学生11名と保護者3名でした.概要は(1)ナラ枯れの実態観察・調査(穿入孔・フラス・感染木幹横断面等の確認、健全木・感染木の胸高直径計測),(2)人々の生活と里山との関わりの歴史的変遷(講義,スライド・DVD視聴),(3)カエンタケ・カシナガキクイムシ成虫の観察・スケッチ,(4)木材自給率・化石燃料依存率の推移(グラフ作成)に伴う林業衰退,(5)放置林増加による樹木高齢化と土壌疲弊による土砂災害危険性の拡大との関係,(6)里山の保全でできること(話し合い)などでした.赤木委員(鹿児島大学)は8月3日(土)に開催された,鹿児島大学農学部オープンキャンパスにおいて体験講義(実験)を担当しました.参加者は高校生6名でした.ここでは二つの実験を体験してもらいました。「土壌に生息する微小な生物の観察」では、はじめに土壌に生息する植物寄生性線虫が農作物の栽培に大きなダメージを与えていることを解説した後,ベルマン法によって鹿児島大学附属農場のトマト栽培跡地から抽出した土壌線虫を光学顕微鏡で観察しました.口針の形状などから植物寄生性線虫であるネコブセンチュウを見分ける方法を解説し,それぞれネコブセンチュウの判別に挑戦してもらいました.「土壌のイオン交換現象を調べる実験」では,はじめに土壌のイオン交換現象のメカニズムについて解説した後,土壌カラムを用いた実験を通じて,その現象を体験してもらいました.南九州に分布する4つの土壌,黒ボク土,低地土,赤黄色土,未熟土を充填した土壌カラムに硫酸アンモニウム溶液を流下させ,集めた浸透液に含まれるアンモニウムイオン濃度を,ヒドロキシビフェニルナトリウム塩を用いたインドフェノール法によって検出しました.土壌カラムを通すことで,アンモニウムイオン濃度が低下していることを目で見て実感してもらいました.藤間委員(山口大学)は8月10日(土)に開催された,山口大学農学部オープンキャンパスにおいて,「土壌の機能を調べてみよう」と題して模擬講義・模擬実験を担当しました.参加者は高校生約40名でした.講義の部では様々な土壌があることや,土壌の持つ機能について解説しました.実験の部では,山口県萩市で採取した黒ボク土の表層および下層,山口大学内の畑土壌、川砂を用いて,土壌の緩衝能,吸着能,土壌呼吸の簡単な実験を行い,土壌により違いがあることを調べました.浅野陽樹委員(鹿児島大学)は8月21日(水)に鹿児島大学教育学部で開催された,夏休みものづくり教室小学生コースA「光る泥ダンゴをつくろう」(主催:鹿児島大学教育学部技術科)に講師として参加しました.参加者は小学生5名でした.赤玉土、黒土、鹿沼土を原材料として3種類の光る泥団子作りをしました.作る工程は,土の粒をつぶし,ふるいで細かい土を集め,濡れた土で芯となる団子を作り,乾いた土をかけて瓶の口で球形に整形し,微細な土を表面に塗りこんで,布で磨くという流れです.子どもたちは,落としたり,爪で傷つけたりと何度も失敗を繰り返しながらも最後まで飽くことなく取り組みました.福田顧問は8月22日(木)に富士山御中道で開催された狭山市学童保育室の活動に講師として参加しました.参加者は小学生41名・保護者9名・学童保育指導員など10名でした.講師は往復のバス内での富士山の自然に関する概説・質疑、5合目駐車場からの登山道沿いの動植物・菌類・地質・気候などの解説を行いました.児童からは、土壌に関わる質疑で「スコリアは土か」,「森林限界は土と関係するか」,「富士山の土の特徴」など,興味深い質問や疑問が出されました.
会員による土壌教育活動を報告します.谷昌幸氏(帯広畜産大学)は,7月10日(水)にスガノ農機主催の「第47回土を考える会」において,受講生110名を対象に,「土壌断面から空気と水の動きを観る」というタイトルで土壌断面の形態から通気性や排水性をどのように評価し改善につなげるかについて講義を行いました.7月29日(月)から8月2日(金)に帯広畜産大学において、全国の中学校・高等学校教諭17名を対象に農業実験実習講習会(主催:北海道総合農学研究会、全国高等学校農場協会、北海道教育委員会)が「土壌診断と作物生育の改善」をテーマとして行われました.そのうち、7月30日(火)には谷昌幸氏(帯広畜産大学)が「土壌診断の基礎」というタイトルで土壌診断の活用,とくに塩基飽和度と陽イオンバランスの改善について講義を行いました.7月31日(水)には石倉究し(十勝農業試験場)が「肥料・土壌改良資材・堆肥の種類と特徴」というタイトルで,肥料の種類や施肥法,土壌診断結果や作物生育に合わせた施肥対応,排水性不良や保水性不良に対する基盤整備,酸性矯正,「土づくり」に向けた堆肥等の有機物の種類や効果,施用量に合わせた施肥対応などについて講義を行いました.
支部における土壌教育活動を報告します.中部支部では,7月21(日)に豊田市自然観察の森において「土壌観察会-土の不思議にせまる!-」を開催しました(参加者は親子を中心に7名).講師は,礒井俊行氏(名城大学),岡村穣氏(元名古屋市立大学),沢田こずえ氏,林亮太氏(名古屋大学),瀧勝俊氏(JAあいち経済連),堂本晶子氏(三重県農業研究所)の6名でした.内容は、土の話,森の中での植物と土の観察,室内実験(吸着・土壌動物),ミニモノリス作りでした.この事業は,今回が18回目です.また,同場所において,8月21日(水)に岡崎北高等学校理数科1年生(40名)を対象とした「理数探究基礎」を岡崎北高校と共催、名古屋大学大学院生命農学研究科協賛で開催しました。内容は,講義,フィールドでの植生・土壌断面観察と室内実験(緩衝能・呼吸・土壌動物),総合討論と発表でした.講師は,浅川晋氏,渡邉彰氏,村瀬潤氏,渡邉健史氏,沢田こずえ氏,柴原藤善氏,林亮太氏(名古屋大学),岡村穣氏(元名古屋市立大学),瀧勝俊氏(JAあいち経済連)の計9名でした.この事業は,今回が16回目です.
本欄では会員の皆様の土壌教育活動も紹介します.情報をお持ちの方は支部選出の土壌教育委員までお知らせください.なお,土壌教育委員会の現在の構成は公式ウェブサイト http://jssspn.jp/edu/ の「委員」をご確認ください.
(日本土壌肥料学雑誌 第95巻第5号 掲載)
高校生による研究発表会(福岡) 2024-09-24(速報)
日本土壌肥料学会2024年度福岡大会では「高校生による研究発表会」をハイブリッド形式で開催いたしました.
対面での発表は大会初日の9月3日(火)12:00~13:30にC会場で行いました.当日は全国から12校13課題の発表がありました.約30名の高校生はポスターの前で研究内容を説明し,大会参加者からの専門的な質問やコメントを受けて,熱心な議論を行いました.藤原土壌肥料学会長(東京大学),および土壌教育委員による審査の結果,最優秀ポスター賞1課題(発表番号H-S09広島県立西条農業高等学校 自然科学部),および優秀ポスター賞2課題(発表番号H-S02浅野中学・高等学校 浅野学園生物部,発表番号H-S08福岡県立糸島農業高等学校 地域イノベーション同好会)が選ばれました.発表会後に行われた表彰式では,藤原土壌肥料学会長と藤間土壌教育副委員長(山口大学)より講評があり,藤間土壌教育副委員長より全発表課題に対して発表証明書と参加賞が手渡されました.次いで,藤原会長より最優秀ポスター賞および優秀ポスター賞の表彰状,副賞が授与されました.発表会・表彰式などの写真,講評は後日掲載いたします.
また, Slackを用いたオンライン発表は9月3日(火)~8日(日)に行い,期間中にチャット形式で質疑応答が行われました.台風の影響で急遽オンライン発表に変更した1課題を含め,3校4課題の発表がありました.発表期間終了後に土壌教育委員会で優秀ポスター賞の審査を行い、優秀オンラインポスター賞1課題(H−L03山形県立村山産業高等学校 サトイモ・芋煮研究班)が 選ばれました.
参加校と発表課題は以下の通りです.
土壌教育活動だより 95-4
日本土壌肥料学会福岡大会では「高校生による研究発表会」をハイブリッド形式で開催いたします.対面での発表のコアタイムは初日の9月3日(火)12:00~13:30にC会場で実施します.また, Slackを用いて9月3日(火)~8日(日)にオンライン発表を実施します.対面での発表は14課題,オンラインの発表は3課題です.多くの方の参加と,活発な議論をお願い致します.
土壌教育委員会の活動を報告します.土壌教育委員会は,2024年6月11日(火)に2024年度第1回土壌教育委員会をオンラインで開催しました.議事の内容は,昨年度の事業報告および今年度の事業と予算の確認,福岡大会における「高校生による研究発表会」の準備状況の確認と会誌におけるフォローアップ企画,動画制作をはじめとする土壌教育の教材開発,土壌教育活動等でした.
土壌教育委員会の事業で行った観察会の報告をいたします.6月1日に,宇都宮大学農学部附属農場において,栃木県立博物館の観察会「田んぼ物語①~土の観察と田植え」を開催いたしました.本観察会は,日本土壌肥料学会の後援を受け、土壌教育委員会の普及事業として開催しています.講師として平井英明顧問,会員の早川智恵氏(両氏とも宇都宮大学)が参加しました.内容は,日本土壌肥料学会のHPに掲載され,学会員のご家族の参加も誘う形となっています.土壌教育の国際ガイドライン(https://doi.org/10.20710/dojo.93.5_321)に則ると,地域固有の文化環境に身を置いて土壌に触れ感受することが,土壌の深い理解の第一歩であるとされたので,地域固有の文化環境の中に身を置き,土壌に触れ感受するという観点から本観察会を企画しました.その内容の概要は,①宇都宮大学農学部附属農場内の落葉広葉樹林下の土壌に素手で触れ、②その表土を活用して育成した苗を素手で苗箱より採取し,③それを素足で水田に入って素手で田植えをするという土壌教育実践法です.これまで実施してきた博物館主催の観察会の内容を,素手や素足で土壌を感受するという観点から,より充実させた内容となっています.参加者は,大人18名,中学生2名,小学生15名,幼児5名,博物館スタッフ4名,大学教員3名,学生アルバイト3名で,合計50名でした。森林表土のみで育成した苗,そこに菜種油粕・魚粉を添加して育成した苗,市販の化学肥料ベースの粒状培土の3種類の苗の生育の様子を観察した後,有機栽培水田圃場に,1株3本植で6条分を田植え紐に沿って有機質肥料で育成した苗を素手で植えました.この様子は,栃木県立博物館のHP(http://www.muse.pref.tochigi.lg.jp/news/2024/06/61.html)に掲載されています.次回は,8月24日です.3本植した水稲株を圃場で掘り取りを行い草丈や籾数の増加を調べることで,土壌の重要性や肥料の効果を感受する体験的土壌教育プログラムとなっています.
委員および会員による土壌教育活動を報告します.森圭子委員(埼玉県立川の博物館)は,同博物館において5月3~4日に,同博物館の「ゴールデンウィークまつり」の中で「土の足ざわりを楽しもう」を開催しました.田んぼの土(沖積土)と畑(黒ボク土)を入れたコンテナの土を裸足でふみ,その足ざわりを楽しんでどちらが好きかを投票してもらいました.保護者を含む参加者は274名でした.また併せて「かわはく周辺の土!」と題して土壌モノリス5本の展示を5月12日まで行いました.同委員は6月15日に同博物館において体験教室「泥だんごづくり」を催しました.赤い土をこねるところから仕上げに磨くところまでを行いました.参加者は19名でした.丹羽勝久委員(株式会社ズコーシャ)は,6月1日に「千曲川ワインアカデミー(千曲川ワインアカデミー | アルカンヴィーニュ 日本ワイン農業研究所 (jw-arc.co.jp)」に出講しました.本アカデミーも10周年であり,受講生はこれからワイン用ぶどうの栽培を目指す方や,ワインに関係する仕事を行っている方がほとんどです.参加者は対面で36名,WEB参加で15名でした.まずは座学にて一般的な土壌診断の話に加え,ワイン用ぶどうの話として,果実のアントシアニン含量,糖分,酸度,ポリフェノール含量等と土壌水分の関係について話題提供を行いました.その後,対面の受講生に対して傾斜地と平坦地の土壌断面を見せ,地形による土壌断面形態の違いを学習しました.会員の石倉究氏(道総研十勝農業試験場)は,6月11日に北海道帯広農業高等学校 農業科学科第2学年38名を対象に出前授業を行いました.はじめに教室内で麦の一生と秋まき小麦の肥培管理法について講義を行いました.次に圃場に出て,秋まき小麦の開花期の様子を観察し,穂数の多少を確認しました.上位葉だけではなく下位葉にも光があたっているかどうかを生徒たちに確認してもらい,光合成効率を最大限発揮するために必要な群落の姿を考察しました.最後に微地形によって茎数および穂数がどの程度変動してしまうかを確認してもらい,深さ50 cm程度の簡易的な断面調査から腐植含量や作土の厚さの違いが秋まき小麦の生育に影響を及ぼしている可能性について考察しました.次回は成熟期の収量調査の学習を予定しています.平井英明顧問(宇都宮大学)は,6月13日,20日に,2020年に群馬大学・宇都宮大学に設置された共同教育学部の必修科目「Forefront科目群(時代を先取りした先端課題解決科⽬群)」にある「環境教育」の中で「土と食」と題して理論編と実践編の2回の講義を担当しました.受講者は,群馬大学211名,宇都宮大学191名で、両大学の教育人間科学系,人文社会系,自然科学系,芸術・生活・健康系に属するすべての学生がこの授業を受講しています.学系を超えてすべての学生に,「環境教育」の中で次のような項目について,第9部門でのシンポジウムや土壌教育委員での活動を基にして積み上げてきました内容を伝えるようにと努めました.その内容の概要は,土壌の生成による形態と機能,土壌教育の国際ガイドラインの紹介,体験型土壌教育,土壌の語源からみた土や壌の意味,地名やアニメや音楽の中で取り上げられている土壌等について紹介をしました.
本欄では会員の皆様の土壌教育活動も紹介します.情報をお持ちの方は支部選出の土壌教育委員までお知らせください.なお,土壌教育委員会の現在の構成は公式ウェブサイト http://jssspn.jp/edu/ の「委員」をご確認ください.
(日本土壌肥料学雑誌 第95巻第4号 掲載)
土壌教育活動だより 95-3
2024年4月より,土壌教育委員会委員1名が交代しました.新しい委員は,九州支部:赤木功氏(鹿児島大学)です.
日本土壌肥料学会2024年度福岡大会において,高校生による研究発表会を開催いたします.対面によるポスター発表とオンライン発表のハイブリッド形式での開催を予定しています.対面によるポスター発表は,大会の初日(9月3日)に行う予定です.詳細は決まり次第,土壌教育委員会公式Webサイトに掲載いたします.
委員および会員による土壌教育活動を報告します. 4月11日に石倉究氏(道総研十勝農業試験場)が北海道帯広農業高等学校農業科学科第2学年38名を対象に出前授業を行いました.はじめに秋まき小麦の起生期の様子を全体的に俯瞰し,黄化した葉先とタイヤ跡で根が浮いた様子を観察しました.これらの症状が発生する原因について生徒たちに考察してもらい,タイヤ跡で葉を傷つけたり播種に失敗したりしたわけではなく,冬枯れと凍上断根であることを説明しました.次に秋まき小麦の起生期茎数を把握する意義を解説し,茎数の数え方を説明しました.まずは1名ずつ株を抜き取ってもらい,葉と茎の区別を練習しました.その後,班に別れて1条1 m長で茎数を数えてもらい,面積あたりの茎数に換算してもらいました.昨年秋は気温が高く,全般的に茎数が多いこと,播種量が7 kg/10aの区よりも11 kg/10aの区で茎数が多いことを確認し,今後の窒素施肥管理の重要性を確認しました.次回は幼穂形成期頃の学習を予定しています.4月22日に丹羽委員と石倉究氏(道総研十勝農業試験場),北海道士幌高等学校アグリビジネス科2年生の13名を対象に土壌断面研修を実施しました.具体的には高校近傍の畑地において隣接防風林(未耕地)と耕地の土壌断面形態を比較しました.生産者からは圃場端(相対的な地形的底部)の排水が悪くて播種すらできないという話を聞いています.まずは未耕地を掘りましたが,非常に膨軟な黒ボク土が出現し,断面中に斑紋は確認されませんでした.それに対して防風林そばの耕地では作土直下から非常に堅密で,穴を掘るのに一苦労しました.耕地側の土壌断面も未耕地と同様,斑紋がなく,元々は排水の良い土壌であることが伺えました.しかし,深さ約20〜50cmの間の土壌硬度が非常に高く,場所によっては30mm以上の数値を示しました.生産者さんの方で,対策として心土破砕が行われていますが,破砕跡が深さ30cm程度に留まり,堅密土層の破砕に至っていないことも確認できました.以上のことから,圃場端の排水不良は人為的な要因による土壌のコンパクションと判断しました.生産者からは隣接防風林に白樺を植林した後に,排水が悪化したという話を聞いています.もしかしたら,白樺植林時の工事作業時に,圃場端で何等かの踏圧を受けるようなことが発生していたのかもしれせん.私自身(丹羽)も排水良好な黒ボク土がコンパクションを受け,播種ができないほど排水不良になると思っていませんでしたので,大変興味深い1日となりました.
本欄では会員の皆様の土壌教育活動も紹介します.情報をお持ちの方は支部選出の土壌教育委員までお知らせください.なお,土壌教育委員会の現在の構成は公式ウェブサイト http://jssspn.jp/edu/ の「委員」をご確認ください.
(日本土壌肥料学雑誌 第95巻第3号 掲載)
2024年度土壌教育委員会
2024年度の土壌教育委員会委員は次の通りです。
名前 | 役職 | 所属 |
---|---|---|
森 圭子 | 委員長 | 埼玉県立 川の博物館 |
藤間 充 | 副委員長 | 山口大学 |
浅野陽樹 | 事務局長 | 鹿児島大学 |
神山和則 | 学会副会長 | |
丹羽勝久 | 北海道支部 | 株式会社 ズコーシャ |
髙本 慧 | 東北支部 | 農研機構 |
中塚博子 | 関東支部 | 東京農業大学 |
切岩祥和 | 中部支部 | 静岡大学 |
角野貴信 | 関西支部 | 公立鳥取環境大学 |
赤木 功 | 九州支部 | 鹿児島大学 |
浅野眞希 | 事業協力委員* | 筑波大学 |
豊田 鮎 | 事業協力委員* | 香川大学 |
早川 敦 | 事業協力委員* | 秋田県立大学 |
村野宏達 | 事業協力委員* | 名城大学 |
顧 問 :福田 直(武蔵野学院大学)
顧 問 :平井英明(宇都宮大学)
顧 問 :小﨑 隆(愛知大学)
顧 問 :隅田裕明(明治大学)
教育担当理事:藤間 充(副委員長兼任、山口大学)
*教員研修およびその他の普及事業担当
委員名簿の更新
土壌教育関連文献集(土肥誌2024)
- 角野貴信・藤間 充・石澤 梓・木川田世波・太田皓心・阿倍佳右・佐藤一郎・安川琉真・ 佐々木章晴・澤口天志・町田竜一・西村希歩・濱田彩香・柴田煌士・鈴木健心・千葉啓・齋藤貴裕・横堀 潤・加藤喜大・小坂摩耶・森田宏雅・小松 葵・髙橋 歩・堀田千晶・市川大和・棚澤由実菜・吉本諭史・五十嵐晴光・奥山永遠・加我叶実・片山諒磨・白土誠鷹・ 瀧田友貴・東出幸也・目黒颯人・山本怜弥・縣 弘樹・大西千尋・近藤良介・藤吉 強・ 平間琢也・黒島 学・佐藤朋之・曽根輝雄・大坊隆司・沼畑明日夢・小泉涼花・夏堀竜之介・ 松坂泰誠・白鳥滉弥・赤石紫音・中居くらら・鈴木奨梧・平山昊也・宮本彩名・松本雄真・伊藤花梨・佐藤麻由・武田誠司・上條 奏・早川智恵 2024 高校生による研究発表の取り組み 土肥誌 95 (2) 106-113
- 角野貴信 ・藤間 充 2024 高校生による研究発表会優秀ポスター賞 土肥誌 95 (2) 102-105
- 平井英明・豊田理桜・吉川美幸・吉田貴洋・高橋行継・出口明子・白石智子・北村里香・早川 智恵 2024 カレーライス1杯分のコメを生産するために必要な土の面積と質量に関する作物・土壌学的調査--森・土・水・田・イネ・コメの一連のつながりを可視化するフィールド型土壌教育プログラムへの貢献-- 土肥誌 95 (1) 1-10
高校生による研究発表会(福岡)のお知らせ
日本土壌肥料学会2024年度福岡大会(2024年9月3日(火)〜 5日(木))において高校生による研究発表会を開催いたします。発表は対面によるポスター形式とオンライン形式によるハイブリッド形式です(オンライン発表方法については検討中)。発表および申込の詳細は実施要項をご参照ください。
- ■対象
- 高等学校または高等学校に相当する教育機関に在籍する生徒であること。国籍は問いません。
- ■応募資格
- 対象教育機関の生徒(引率教員も参加可)
日本土壌肥料学会に加入する必要はありません。 - ■分野
- 化学、生物、地学、環境学およびそれに関連した科学研究一般の中で、以下のキーワードと関連する分野
【キーワード】 土壌、肥料、植物栄養、食料生産、環境 - ■発表日時
- ポスター発表:2024年9月3日(火)12:00〜13:30(予定)
(説明のためのコアタイムは60分です。詳細は後日公表します。)
オンライン発表:2024年8月29日(木)~9月8日(日)(予定) - ■申込方法
- 実施要項をダウンロードし、申込用紙(様式1)に必要事項を記入し、講演要旨を要旨ファイル(様式2)に本文400字以内で入力の上、下記の申込み先(E-mail: soil.edu.Office@gmail.com)までEメールにて、送付ください。期限厳守にてお願いいたします。
【発表申し込み】2024年5月10日(金)(必着)
【講演要旨提出】2024年5月31日(金)(必着) - ■申込み先/問い合わせ先
- E-mail:soil.edu.Office@gmail.com
〒890-0065 鹿児島市郡元1丁目20-6
鹿児島大学教育学部 浅野陽樹
〒753-8515 山口市吉田1677-1
山口大学大学院創成科学研究科 藤間 充(副担当)